気候変動の課題に直面する女性とその健康 | 武田薬品

草原を一人で歩く人

気候変動の課題に直面する女性とその健康

Calendar
2024年9月20日

「私たちの親も、祖父母も、その祖先も、これほどの洪水を目にしたことがないでしょう」

Mohamed Amin, a community representative in the village of Companiganj, Bangladesh

バングラデシュ・コンパニガンジ村のモハメド・アミンさん

バングラデシュのコンパニガンジ村で暮らすモハメド・アミンさんは、2022年夏に甚大な被害をもたらした洪水をこう振り返りました。この洪水によって広大な範囲が水に浸かり、南アジアの何千万人もの人々が大きな被害を受けました。

「この村には公的な避難所が一つもなかったので、マドラサ(教育施設)に避難しました」と、アミンさんは言います。「150世帯がここに身を寄せ、寝る場所どころか座る場所さえ見つけられませんでした。子どもを抱いて一晩中歩いていた母親もいました」

アミンさんが経験したような極端な気象事象は、気候変動が進むにつれて発生頻度が増加しており、健康面および社会経済面に広く影響を与えています。国連の気候変動政府間パネルGo to https://www.un.org/en/climatechange/ipcc-wgii-reportによると、現在34億5000人がこれらの影響に非常に脆弱であると推定されており、これは世界人口の45%に相当します1

極端な気象事象は医療システムにも大きな負荷をかけることから、リソースの少ない地域では、医療の格差をさらに悪化させます。こうした状況下で支援がなければ、事態はいっそう悪化する可能性があります。

タケダは2021年のグローバルCSRプログラムにおける従業員投票によって、こうした課題解決を支援することを決定しました。支援先は、Pathfinder InternationalGo to https://www.pathfinder.org/の4年間の取り組み「Advancing the Leadership of Women and Girls Towards Better Health and Climate Change Resilience(=健康増進と気候変動に対する回復力構築に向けた女性と少女たちのリーダーシップ強化)」です。この取り組みはバングラデシュとパキスタンのコミュニティが気候の緊急事態に対応するのを支援する ために、総合的なアプローチを採用しています。

Pathfinder Internationalで臨時CEOを務めるタビンダ・サロシュさんは、このアプローチが革新的である理由を次のように説明しています。

「このプログラムでは、女性を変化の促進役に位置付けています。対象となる分野には、医療サービスへの公平なアクセスの促進、気象事象に対する地域の対応力を強化する上での、医療システムの強化、栄養状態の改善、安全な水の確保、衛生などがあります。」

このプログラムは現在3年目を迎えていますが、すでに約15万人の母親、父親、子どもたち、地域の医療支援者や医療従事者に貢献しています。以下に具体的な取り組みの例を紹介します。

  • 3,000人以上の地域の医療支援者にトレーニングを提供し、リソースの少ない地域のニーズを満たし、緊急事態への対応力を強化することに貢献

  • 1万3000本のマングローブの植樹を支援し、海岸線、住居、インフラ設備を高潮から守ることや、漁業を営む地域に新たな生活の手段を提供することに貢献

  • コミュニティ向けに勉強会を実施し、気候変動に強い生計の立て方、農業の効率性向上に役立つ知識、リソース、スキルを共有。参加者は米の苗、肥料、野菜の種子を受け取ったほか、土のう袋による野菜栽培Go to https://unfccc.int/climate-action/momentum-for-change/activity-database/momentum-for-change-organic-sack-gardening-in-bangladesh#:~:text=Organic%20sack%20gardening%20coordinates%20urban,and%20sides%20of%20the%20sacks.が収穫量の増加にも穀物の保護にも役立つことを学びました。

  • 地元の地域メンバーと協力して、地元の気候課題をテーマとし、潜在的な解決策を伝える16の教育パフォーマンスを実施

  • バングラデシュ政府と協力して極端な雨や洪水により発生が増加した蛇による咬傷 、妊婦の健康、月経時の衛生、性別に基づく暴力、地震および雷対策といったテーマについて、若い世代に啓発活動を行うため、5本のショート動画を制作

  • 30の学校で学生向けに気候変動と健康のセッションを開催し、学生自身の手で学生委員会の会合を開催したり、安全性に関する計画を策定したりできるよう支援

Woman holding baby
Seed bank
Dr. Tabinda Sarosh

「女性主導の備え、対応、復旧を通じて、私たちはコミュニティを力強く支援しています。最終的には、女性が健康な未来への道を切り拓く手助けをしたいと考えています 」

Pathfinder International タビンダ・サロシュ臨時CEO

活動は前進していますが、やるべきことはまだまだあります。このプログラム自体は2025年に終了予定ですが、私たちは持続可能な変化をもたらすことに取り組んでいます 。

大薮 貴子 (チーフ グローバル コーポレート アフェアーズ&サステナビリティ オフィサー)は、現地の活動が持続していく重要性を踏まえ、「医療格差の解決には、不屈の精神と長期的な視野をもって取り組むことが大切です」と述べています。「だからこそ、私たちのグローバルCSRプログラムは、それぞれ4~10年にわたる期間のパートナーシップを結んでいるのです」

この姿勢は、私たちが患者さんの生活を豊かにするために行ってきた、長期的・革新的なアプローチと一致します。私たちはこうしたアプローチによって、243年以上にわたり進化を続けてきました。さらに、この考え方はPathfinder Internationalが大切にしていることとも合致します。

サロシュさんは次のように述べています。「女性主導の備え、対応、復旧を通じて、私たちはコミュニティを力強く支援しています。最終的には、女性が健康な未来への道を切り拓く手助けをしたいと考えています 」


  1. IPCC Report on Impacts, Adaptation and Vulnerability:. United Nations. Accessed September 11, 2024. https://www.un.org/en/climatechange/ipcc-wgii-reportGo to https://www.un.org/en/climatechange/ipcc-wgii-report