臨床試験の可能性をスマート技術が広げる | 武田薬品

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臨床試験の可能性をスマート技術が広げる

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2024年9月30日

本情報は医療従事者から提供される助言に代わるものではなく、診断や治療に使用することはできません。気になる症状や医学的な懸念がある場合、また、適切な診断と治療を受けるためには適切な医療機関を受診ください。


薬をのみ忘れたことがありますか? もしくは、薬をのんだかどうかを思い出せずに焦り悩んだことがありますか? このような経験は、決して珍しいものではありません。

こうした服薬アドヒアランス(指示された用法・用量通りに薬を服薬すること)の問題が及ぼす影響は、臨床試験という場面なら、いっそう大きなものになる可能性があります。服薬アドヒアランスの記録は、それが患者さんでも、臨床試験の実施施設でも、手作業で実施されるため、追跡には煩雑さが伴います。しかし、臨床試験を効果的に実施するには、服薬アドヒアランスの徹底と、その記録が重要です。

「患者さんが所定の時間に、用法・用量を守って服薬していることが、極めて重要になります」と、Digital Strategyのヘッドを務めるジョーダン・ブラヤノブは言います。「特に、慢性的な症状や重篤な症状を管理していく場合は、服薬アドヒアランスとその正確な記録が非常に重要です」

ジョーダンはこれまでの経験を振り返り、患者さんがある特定の症状を抱えている場合、服薬アドヒアランスとその追跡は難しくなることがあると指摘します。「臨床試験でこうした症状を管理していくことの複雑さは、想像に難くないでしょう」

では、患者さんが自宅で決められた行動をとる分散型臨床試験(DCT)の場合はどうでしょうか。この場合、服薬アドヒアランスや記録の正確さが、臨床試験の結果に影響するかもしれません。

4人の男性

スマート技術で臨床試験の服薬アドヒアランス改善に取り組む部門横断型チーム

スマート技術(データ統合フレームワークを持つスマート包装)を活用すれば、臨床試験を効率的に進められるかもしれません。患者さんが薬の包装を開けたときや、服薬したときに、そのことが自動的に記録されるからです。これなら、患者さんも臨床試験の実施施設のスタッフも、これまでよりも少ない労力で、より正確なデータが得られ、利便性も高まることになるでしょう。

Diagnostic, Software Devices and Packagingのヘッドであるシュリマン・バナジーは、「薬を正しく服用できるかどうか、また服薬アドヒアランスを正しく追跡できるかどうかは、多くの要因に左右されます。しかし、臨床試験の各ステップをシンプルにしていけば、そうした要因も解消していけるはずです。私たちは現在、スマート技術を活用してデータをより正確なものにすること、そしてデータを取得する労力を減らすことに取り組んでいます。具体的には、バイアルやボトル、ブリスターパック、自動注射器といったさまざまな投与タイプでスマート技術を検討しています」と語ります。

転機


世界的なパンデミックが、臨床試験にスマート技術を活用する転機となりました。パンデミックにより、DCTで正確なデータを得る必要性が注目されるようになったためです。

シュリマンは、「COVID-19のパンデミックにより、患者さんとのやり取りや、信頼性の高いデータの収集が難しくなりました。臨床試験には時間もリソースもかかるため、データの質と試験の効率性が極めて重要になるのです」と述べています。

そこで、ジョーダンとシュリマンは、Clinical Trial Tools and Technologyのヘッドであるセルゲイ・クリムゴルドと、Global Clinical Supply Chain Planningのシニアディレクターであるケビン・シュワルツとともに、このコラボレーションに乗り出すことにしました。

セルゲイは、「パンデミックが始まると、臨床試験の担当者と患者さんとのやり取りがあまりできなくなり、患者さんの電子日誌や臨床試験の実施施設の記録といったデータ収集方法では、データの取得や検証が難しくなりました。そのため、データ分析も難しくなり、患者さんの服薬アドヒアランスの記録も過剰になったり、過少になったりしました」と話します。

さらにシュリマンは、スマート包装があれば、データ収集を分散して実施しやすくなり、患者さんは自宅から臨床試験に参加できるようになると指摘します。「私たちが使用しているのは、包装が開封されたときに記録するスマートデバイスです。記録されたデータはデータフレームワークにアップロードされ、そこで検証されます。アップロードの時間も記録されます。このようにデータを詳細に得られることで、臨床試験の担当者も、規制当局者も、医師も、臨床試験の結果をより把握しやすくなります」

さらにチームは、スマート包装によりデータを深掘りできるようになったことで、より効率的に問題を特定しプロセスを改善できるようになったと言います。

シュリマン・バナジー

「薬を正しく服用できるかどうか、また服薬アドヒアランスを正しく追跡できるかどうかは、多くの要因に左右されます。しかし、臨床試験の各ステップをシンプルにしていけば、そうした要因も解消していけるはずです。私たちは現在、スマート技術を活用してデータをより正確なものにすること、そしてデータを取得する労力を減らすことに取り組んでいます」

-シュリマン・バナジー Diagnostic, Software Devices and Packagingヘッド

経験からの学び


このスマート技術チームでは、部門や役割、専門分野の壁を越えて、臨床試験に参加する患者さんの利便性を高めるための、さまざまな方法を模索しています。そして、各自がこの取り組みに新たな戦略的視点を提供しています。

セルゲイは、「それぞれの経験に信頼を寄せ、大きな視点から現状に挑み、共通の目標を達成しようとしている」と、チームについて述べています。

スマート包装では、服薬時に人が記録するのと少なくとも同程度の正確さでデータを記録できることが、このパイロット運用で示されています。さらに、セルゲイは「データを自動収集できるため、パイロット運用を行う臨床試験の実施施設にとっても利便性が高く、試験施設からは、パイロット運用を継続してほしいという声が上がっているほどです。タケダでは現在、電子同意書や遠隔診療といった、特定の臨床試験ステップをクリニックから患者さんの自宅に移せるような新しい技術と、このスマート包装を組み合わせる方法も検討しています」と話します。

パイロット運用からの学びを踏まえ、チームは他の用途も模索していると、ケビンは付け加えます。「この技術を適切に応用することで、臨床試験をより効率的に進められるでしょうし、科学的根拠に基づく新たな治療方法を構築できる可能性もあるでしょう」

患者さん中心の臨床試験に向けた大きな一歩


チームは常に、患者さん中心のケアという視点で物事に臨んでいると、ジョーダンは言います。「どんな問題も、クリエイティブな解決方法を見つけるための促進剤にしています。私たちは200年以上前からイノベーションを追求して患者さんに貢献してきました。ですから、こうした技術革新を取り入れていくことは、私たちにとって自然なことなのです」

さらに、ジョーダンは次のように続けました。「私たちは、服薬アドヒアランスの向上に寄与する技術を利用することで、患者さんが臨床試験に継続して参加しやすくなる環境をつくろうとしています。患者さんの暮らしを豊かにする新たな治療選択肢を実現する上で、これは大きなステップになります」