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消化器系疾患のケアモデルで分野を横断する | 武田薬品

医師が患者に話している様子

消化器系疾患のケアモデルで分野を横断する

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2025年3月13日

本記事は、実際の患者さんの体験談を紹介しています。特定の患者さんの体験を紹介したものであり、典型的な患者さんの体験を紹介するものではありません。気になる症状や医学的な懸念がある場合、また、適切な診断と治療を受けるためには適切な医療機関を受診ください。


ケン・フリードマン

米国の大手健康保険会社で南東部のシニアメディカルディレクター兼消化器系領域専門家のフリードマンさん

医師であり理学修士号とMBAを持つケン・フリードマンさんは、炎症性腸疾患(IBD)患者さんへのケアに対して思い入れがあります。

「私にはIBD、具体的にはクローン病にかかっている家族がいます」と、フリードマンさんは言います。

IBDは、腸を中心とする消化管粘膜に炎症を引き起こす慢性の進行性疾患の総称です1。こうした疾患では、腸に症状が現れるだけでなく、皮膚や関節、骨、目、肝臓といった場所にも症状が出現します2,3。メンタルヘルスに影響することもあります。

IBDは多様な疾患であり、求められるケアも複雑です。米国の大手健康保険会社で南東部のシニアメディカルディレクター兼消化器系領域専門家のフリードマンさんは、このことを実体験からよく知っています。フリードマンさんが「One x One Summit Series Coalition」を通じて他の人々と協力するよう考えたのも、こうした背景があってのことでした。タケダが参画・支援する「One x One Summit Series Coalition」は、第一線の医療従事者、保険者、支援者、専門機関、そしてIBDと脳腸相関障害の患者さんで構成される多様なグループです。このグループでは、タケダの支援のもと、患者さんに総合的にアプローチできる分野横断型ケアモデル(MCM)の実用的な推奨項目の作成に取り組んでいます。

「私の家族には、医療の専門家や社会的サポートなど多方面から支援を受けられる環境がありませんでした。ですから、この取り組みが患者さんの大きな助けになるだろうと私は感じています」と、フリードマンさんは述べています。

MCMで目指すのは、消化器系専門医、 リウマチ専門医、皮膚科専門医、栄養士、精神科医などの力を結集して、IBDおよび脳腸相関障害の患者さんに総合的で包括的なケアを提供することです2

消化器系専門医を「IBDと脳腸相関障害ケアの司令塔」に


One x One Series Summit Coalition
「One x One Series Summit Coalition」 は、3年前から既存の査読論文やグループ独自の専門的見解を基に、現行のIBDや脳腸相関障害の管理における不足部分や障壁、制限を特定し、その上で重要なニーズの優先順位付けを行っています3。それらの結果をとりまとめて白書「A Call to Action to Advance Care for People with IBD or DGBI Using Multidisciplinary Care ModelsGo to https://www.onexonegi.com/pdf/13100_Takeda_Microsite_OnexOne%20Whitepaper_v15%20(TL).pdf」として発表しました。

IBDの一般的な症状:2,4

  • 腹痛
  • 便秘/下痢
  • 便意切迫
  • 倦怠感
  • 体重の減少

脳腸相関障害(以前は機能性胃腸症と呼ばれる)には、過敏性腸症候群(IBS)、機能性便秘や慢性便秘など、その症状に基づいてさまざまな疾患が該当します5。一般的な症状は次の通りです:3,6

  • 酸逆流
  • 腹痛
  • 悪心
  • 下痢
  • 便秘

上記の症状は一例です。これらの症状があってもIBDや脳腸相関障害とは限りません。不明な点や懸念点がある場合は、医師にご相談ください。

セシエル・ルーカー

国際機能性消化管疾患財団(IFFGD)のプレジデントを務めるセシエル・ルーカーさん

このグループの運営委員会のメンバーで、国際機能性消化管疾患財団(IFFGD)のプレジデントを務めるセシエル・ルーカーさんは、患者さんに包括的なケアやリソースを提供するチームを構成していく上で、この白書は非常に役立つと考えています。白書を活用することで、生活の質と臨床転帰の改善、さらには患者さんの医療費の削減も期待できます。

「この白書により、消化器系専門医はIBDと脳腸相関障害ケアの司令塔へと進化します」と、ルーカーさんは述べています。

「力を合わせれば、個よりも大きなことが実現できる」


MCMは他の疾患領域、特にがんの領域ですでに試行されているアプローチです。「One x One Summit Series Coalition」では、そのアプローチをIBDや脳腸相関障害に取り入れ、さらに発展させていけるよう、さまざまな地域や診療環境を視野に、質の高いMCMの標準化、導入、拡張性の確保に取り組んでいます。

同じく運営委員会のメンバーであるフリードマンさんは、このグループには大きな変化を起こそうとする揺るぎない姿勢があると述べています。

「患者さんやその家族にとって、米国の医療システムは簡単に理解できるものではありません。専門家は細分化され、居場所もバラバラなことがあるからです」と、フリードマンさんは言います。「この白書はこの現状に正面から取り組むもので、総合的なケアのあり方について保険者や規制当局と協議するための重要な出発点として機能します」

同じく運営委員会のメンバーで、シカゴ大学病院のIBD・結腸直腸外科センターのアソシエイトディレクターでもあるミシェル・ルビンさん(看護学士、臨床専門上級看護師)も、この取り組みの重要な点を指摘しました。白書で提案しているMCMは、支援の届かない地域に暮らす人々も分野横断型ケアにアクセスすることに役立つとしています。

ミシェル・ルビンさん

シカゴ大学病院IBD・結腸直腸外科センターでアソシエイトディレクターを務めるミシェル・ルビンさん

「遠隔地では、医療資源や専門家も限られていることがあります。そこで、MCMではテレヘルス(遠隔医療)を利用した診療を重要視しています。遠隔地でも専門医とつながりケアを受けられるのです。

このような遠隔地でも、私たちが力を合わせれば、個人よりも大きなことが実現できます」と、クローン病・大腸炎財団の高度医療提供者でIBD APP Preceptorshipプログラムの理事も務めるルビンさんは指摘します。「患者さんに最高のケアを提供するには、まさに『一つの村が必要(注:多くの知恵や支援が必要という意味)』なのです」

変化を望む気持ち


「One x One Summit Series Coalition」のメンバーと、この白書について、またMCMの効果について話していると、各メンバーには個人的な背景があり、その背景と共に信念を持ってこの活動に取り組んでいることが分かります。例えばルビンさんは、40年以上前にシカゴ大学で看護師として働き始めてからずっとIBDや脳腸相関障害の患者さんのケアに力を注いできました。

「私はアイオワ州の農場で育ち、両親からは『情熱を傾けられるものを見つけなさい』と言われてきました」と、ルビンさんは振り返ります。「その対象は、IBD病棟で働き始めてすぐに見つかりました。そこで患者さんがどれほど苦しんでいるか、どれほど味方を必要としているかを目の当たりにしたからです」

タケダが「One x One Summit Series Coalition」の創設メンバーになったのも、同じく変化を起こしたいという想いからでした。それは、ヘルスケアコミュニティの教育向上に取り組む革新的なプログラムを支援してきた私たちの長い歴史の延長線上にあり、患者さんをすべての活動の中心に置くという私たちの姿勢を反映したものでもあります。

ブライアン・テレリ

消化器系のUSメディカル部門でディレクターを務めるブライアン・テレリ

消化器系のUSメディカル部門でディレクターを務めるブライアン・テレリは、このコミュニティと共に私たちが成し遂げていることを誇りに思っていると述べています。

「この白書は、より良い患者さんケアを目指す私たちのさまざまなアプローチのほんの一例に過ぎません。IBDや脳腸相関障害の患者さんに対するケアを、根本から見直せる、すばらしい機会になっています」と、ブライアンは言います。「また、さまざまな分野から人々が集まり、力を出し合っている姿には、私たちが声を合わせ、人々の意識を高め、消化器系疾患分野に協力して取り組むことの重要性が浮き彫りになっています」

さらにブライアンは「私たちはこれからもMCMの役割を前進させることに全力で取り組み、アンメットニーズに関する対話を進め、患者さんの健康のために活動していきます」と述べ、次のように結びました。「仲間である各メンバーのリーダーシップのもと、この取り組みがどんどん進化していく様子を楽しみにしています」


  1. Crohn’s and Colitis Foundation of America. The Facts about Inflammatory Bowel Disease. 2014. Accessed on August 9, 2024.
  2. Schoenfeld R, Nguyen GC, Bernstein CN. Integrated care models: optimizing adult ambulatory care in inflammatory bowel disease. J Can Assoc Gastroenterol. 2020;3(1):44-53. doi:10.1093/jcag/gwy060
  3. One x One Summit Series Coalition. A Call to Action to Advance Care for People With IBD or DGBI Using Multidisciplinary Care Models. Takeda; 2024. Accessed August 9, 2024.
  4. Singh S, Loftus EV Jr, Limketkai BN, et al. AGA living with clinical practice guideline on pharmacological management of moderate-to-severe ulcerative colitis. Gastroenterology. 2024;167:1307-1343. doi:10.1053/j.gastro.2024.10.001
  5. Sperber AD, Bangdiwala SI, Drossman DA, et al. Worldwide prevalence and burden of functional gastrointestinal disorders, results of Rome Foundation global study. Gastroenterology. 2021;160:99-114. doi:10.1053/j.gastro.2020.04.014
  6. Ohlsson B. Extraintestinal manifestations in irritable bowel syndrome: a systematic review. Ther Adv Gastroenterol. 2020;15:1-18. doi: 10.1177/17562848221114558