Takeda logo

インドで妊産婦の健康を見守る患者ケアナビゲーター | 武田薬品

タブレットを見る2人の医師

インドで妊産婦の健康を見守る患者ケアナビゲーター

Calendar
2025年2月6日

「その母親は、エンドウ豆畑で得られる日給を諦めてまで、病院に行きたくなかったのです。この地域の貧困は深刻で、どの村も収穫期には畑仕事を最優先にします」

そう語るのは、インドのマディア・プラデシュ州の農村地域を活動拠点とする患者ケアナビゲーターのネク・ナラヤン・パテルさんです。パテルさんは、7人目の子どもを妊娠して重度の貧血に陥っていた患者さんを思い出していました。パテルさんはこれまでの経験から、畑仕事をする妊婦の健康には特に注意を払っていました。妊産婦は、自分よりも家族の健康を優先する傾向があることを知っていたからです。そこで、パテルさんは救急車を呼び、病院で輸血を受けるよう、この母親を説得しました。

マディア・プラデシュ州で収穫期にエンドウ豆畑で働く女性たち

マディア・プラデシュ州で収穫期にエンドウ豆畑で働く女性たち

パテルさんは、Integrated Women in Health Network (iWIN:統合型女性医療ネットワーク)Go to https://networksofcare.org/と呼ばれる妊産婦保健プロジェクトで採用された、バイクを持っていてテクノロジーに詳しい32人の若者のうちの1人です。彼らは出産時の合併症を予防するため、「患者ケアナビゲーター」として遠隔地に赴き、適切なタイミングで適切なケアを受けられるよう准看護助産師を支援します。

世界保健機関(WHO)によると、2020年には毎日およそ800人の女性が妊娠や出産に伴う予防可能な要因で亡くなりました1。インドは世界の妊産婦死亡件数の17%、新生児死亡件数の26%を占めています2

ユニセフは、妊産婦の死亡の直接的な要因としては重度の出血、感染症、高血圧、分娩合併症、危険な妊娠中絶などがよく知られているとし、これらの大部分は回避が可能としています3

この認識を踏まえ、グローバルヘルスの非営利団体で、ジョンズ・ホプキンス大学の関連団体でもあるJhpiegoGo to https://www.jhpiego.org/は、回避可能な妊産婦の死亡を防止するため、iWINプロジェクトを発足させました。このプロジェクトは、タケダのグローバルCSRプログラムの一環として2021年に従業員によって支援対象に選ばれ、タケダからの資金援助を受けつつ、マディア・プラデシュ州政府と協力して運営されています。Jhpiegoグローバルのシニアディレクターで、Jhpiegoインドのカントリーディレクターも務めるソメシュ・クマール博士は、このプロジェクトのアプローチを、患者さんを中心とした継続的かつ協調的なケアであると述べています。

「私たちは、技術的ソリューションを活用し、官民の施設全体で計画的にイノベーションに取り組むことで、州の人口の43%、年間で推計90万人の妊産婦へのケアを提供することを目指しています」と、クマール博士は述べています。

助産師補助看護師と妊娠中の顧客

検査を待つ妊産婦(右)と、パテルさん(左から2人目)と一緒に作業する准看護助産師のラクシュミ・シャルマさん(左から3人目)。

そうした技術革新の一つに、Bluetoothを活用したポイント・オブ・ケア(その場で行う医療)を可能にする診断キットがあります。このキットにより、「村落保健栄養の日」に妊産婦検診を行うことも容易になりました。このキットは2023年の発売以来、設備の整った医療施設に行くことが難しい地域に医療ケアを提供するための貴重なツールになっています。准看護助産師であるラクシュミ・シャルマさんはその利点を目の当たりにしています。

「今では、胎児心拍モニターで胎児の心拍数を正確に測定し、体重計で妊産婦の体重増加を確認し、血圧計で血圧をチェックし、ヘモグロビン測定器で血液のヘモグロビン濃度を正確に測定することが、この村で行えるようになりました」と、シャルマさんは言います。

プロジェクト開始以来、パテルさんと他のケアナビゲーターたちは、マディア・プラデシュ州の2万人以上のリスクの高い妊産婦を指導し、妊娠高血圧症候群の91%、貧血の79%、妊娠糖尿病の65%を管理することができました。また、このケアナビゲーターモデルの成功により、女性のがんに関するプロジェクトにおいても同様のアプローチが採用され、初期のスクリーニングから診断、治療、フォローアップに至るまで、継続的なケア実現が可能になりました。

このような成果は、タケダのグローバルCSR&パートナーシップストラテジーのヘッドである安藤寿絵にとって大きな意味があります。安藤は、このプロジェクトの成果に感銘を受けるとともに、今後さらなる進展にも期待していると述べています。

「私たちは2026年までiWINプロジェクトへの支援を継続し、持続的な進歩と大きな成果を実現する基盤を構築していくことを目指します」と、安藤は言います。「これは、240年にわたりタケダの進化と成功を後押ししてきた長期的アプローチそのものです」

助産師ラクシュミ・シャルマ

准看護助産師のラクシュミ・シャルマさんは、Bluetooth対応の胎児心拍モニターやヘモグロビン測定器などが用意された診断キットを使い、タブレットに正確なデータを記録しています。

各種支援と地域保健システムに専任ケアナビゲーターが加わったことで、患者さんに最善のケアを提供するための体制が大きく変わってきたと、シャルマさんのような最前線の医療従事者は実感しています。

「おかげで私たちはリスクの高い妊娠をより多く、より早期に特定できるようになりました」と、シャルマさんは言います。「これは、私たちが仕事に集中し、妊産婦に質の高いサービスを提供する上でも効果的です」


  1. World Health Organization, Maternal Mortality. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/maternal-mortalityGo to https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/maternal-mortality
  2. Meh C, Sharma A, et al. Trends in Maternal Mortality in India over Two Decades in Nationally Representative Surveys. BJOG. 2022 Mar;129(4):550-561. doi: 10.1111/1471-0528.16888. WHO Report (2019): Trends in Maternal Mortality 2000 to 2017. Geneva: WHO, UNICEF, UNFPA, World Bank Group, and the United Nations Population Division.
  3. UNICEF, Maternal health. https://www.unicef.org/india/what-we-do/maternal-healthGo to https://www.unicef.org/india/what-we-do/maternal-health