伝統を基盤に、新型コロナウイルス感染症の収束に向けた取り組み | 武田薬品
日本で培った伝統を基盤に、新型コロナウイルス感染症の収束に向けた取り組みを進める
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をはじめ、難しい対応を迫られる感染症に対するタケダの取り組みを、歴史とその変遷を交えて、日本ワクチン事業部の事業部長を務める今川 昌之がご紹介します。
タケダのグローバルワクチンビジネスユニットが正式に発足したのは2012年ですが、タケダがワクチンを扱う歴史は古く、70年以上にわたり、日本の人々の健康を守るため、ワクチンの供給を続けてきました。ワクチンに関する豊富な実務経験に加え、習熟した生産技術、ウイルスや細菌を取り扱う専門知識、パンデミックに対応する大規模製造能力やインフラ設備を有するタケダは、日本において平時に供給するワクチンに加えて、パンデミック感染症の感染拡大を収束させるためのワクチン開発や供給など、短期的・中長期的に日本の皆さんのニーズに応えることができます。
「新型コロナウイルスワクチンを日本の皆さまに迅速にお届けするお手伝いができたことを、大変誇りに思います」と日本ワクチン事業部事業部長の今川昌之は話します。
日本で築き上げた歴史と日本への想い
タケダの光工場が操業を開始したのは、第二次世界大戦の終戦直後です。工場の建設が進むのと並行して、政府からの要請により発疹チフスワクチンの開発が始まりました。この時期、原料の供給が極端に不足していたため、ワクチンの開発は容易ではありませんでした。1947年1月5日の朝、光工場で生産された最初の製品として、発疹チフスワクチンの第1ロットが出荷されました。終戦から1年5カ月、政府の要請から1年経たないうちに、ワクチンの出荷を実現したのです。
タケダでは2012年にグローバルワクチンビジネスユニットを立ち上げ、デング熱、COVID-19、新型インフルエンザ(H5N1及びプロトタイプ)、ジカ熱など、世界で最も困難とされる感染症の解決に向けて、革新的な取り組みを進めています。
「現在は、日本だけでなく世界のアンメット・メディカル・ニーズ(有効な治療法が確立されていない疾患に対する医療ニーズ)を満たすワクチンを開発し、感染症のリスクにさらされている人々や子どもたちを支援しています。当社の事業規模と、これまでに培ってきた信頼を基に、日本の皆さまにワクチンを供給するという視点で事業を展開してきました。そしていま、日本のワクチン開発はCOVID-19ワクチンなしに語ることはできません」と今川は説明します。
COVID-19 ワクチンのパートナーシップを構築
タケダは、その価値観と伝統に基づき、厚生労働省や世界のワクチン開発企業と協力して、COVID-19ワクチンを日本で迅速かつ持続的に供給する取り組みを行っています。
「COVID-19ワクチンを自社で開発ができなかったわけではありません。ただ、自社開発を行うと供給までに時間がかかることが予想されました。このことから、世界を見渡し開発が進んでいる有望なワクチンがあれば、そのワクチンを一日でも早く日本に導入することが、社会に対する貢献度が最も大きいと考えました。」
厚生労働省およびModerna社との三者間契約に基づき、タケダは2021年5月21日に日本における製造販売承認を受けたModerna社のmRNAワクチン合計1億4,300万回接種分を輸入・供給することで合意しています。2021年に5,000万回分の日本への輸入を完了し、追加9,300万回を2022年に輸入・提供する予定です。さらに、Novavax社とCOVID-19ワクチン候補を日本で開発、製造、供給するための契約を結んでおり、既に厚生労働省に製造販売承認申請を行っています。Moderna社とNovavax社の両社は、2020年前半時点で、すでに有望な科学的知見や初期の臨床試験研究データが得られていたこともあり、タケダのパートナーとして選定されました。
「先見の明があったと思います。当時は、どの会社であっても、開発しているワクチンが製品化できるかは不確実性が高い状況であり、いずれのワクチン候補にとっても成功する保証はありませんでした。Moderna社とNovavax社とパートナーシップを結べたことは、タケダのグローバルワクチンビジネスユニットの優れた目利きがあったと感じています。」
経験からの学びと、今後の展望
「COVID-19を経験し、世界は大きく変わりました。社会の変化が、今後の研究における創薬力の強化や生産設備の充実のきっかけになると信じています」と語り、グローバル化が進む中で、感染症の危険性を認識し、将来の流行やパンデミックに備える必要性が高まっていることを指摘しました。
パンデミック以降、バイオ医薬品業界は公衆衛生の向上という共通の使命のもとに結集しました。イノベーションや科学の進歩を促進する企業間のコラボレーションに関する新たな基準が設定されるなど、新たな動きがありました。タケダはCOVID-19に対する取り組みとして、安全性と有効性が認められたワクチンを日本に供給するため、現在のパートナーシップを継続していきます。
「新型コロナウイルスから日本を守るためのワクチンの提供に関わることは、歴史に残る一大プロジェクトです」と今川は述べています。
<略歴>
今川 昌之
平成6年に徳島大学大学院(薬学修士)修了、平成18年に神戸大学大学院(経営学修士)修了。平成20年に武田薬品工業に入社、令和2年6月に一般社団法人日本ワクチン産業協会 理事長(兼任)、同10月1日から武田薬品工業日本ワクチン事業部 事業部長、その他、公益財団法人 予防接種リサーチセンター理事(兼任)