希少疾患の健康格差:診断までの長い道のり | 武田薬品


希少疾患の健康格差:診断を受けるまでの長い道のり

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2024年2月29日

本記事は、特定の患者さんの体験談を紹介したものであり、典型的な患者さんの体験を紹介するものではありません。気になる症状や医学的な懸念がある場合、また、適切な診断と治療を受けるためには医療機関を受診してください。


南アフリカで暮らすジャニス・ストライダムが診断に至るまでの道のりは、長くつらいものでした。彼女は15歳のとき初めて、手の腫れに気がつきました。その翌日、腫れはひどくなっていましたが、医師はクモによる咬傷が原因と診断しました。それから数年の間、1週間おきに彼女の顔、腹、脚などに腫れが見られました。

遺伝性血管性浮腫(HAE)が原因であることを医師から告げられたのは、彼女が21歳のときでした。HAEとは、体のさまざまな部位に体液が過剰に蓄積する、認知度が低い希少な遺伝性疾患です。

「最初に手の腫れに気がついてから確定診断を受けるまでに、6年かかりました」と、ジャニスは言います。「とても長い時間に感じました。痛みはあるのに、その原因がわからないのです」

彼女の経験は特別なものではありません。ジャニスのように希少疾患を抱えている人は3億人もいます1,2。希少疾患の患者さんにとって特に大きな健康格差となっているのは、診断を受けるまでに長い時間がかかることです。希少疾患の患者さんが正確な診断を受けるまでの平均的な期間は4~5年ですが、疾患によっては10年以上かかることもあります。そして、HAEの患者さんの半数がこうした状況に置かれています3,4,5,6,7

適切な診断を受けるには、住んでいる場所が重要になる場合があります。専門施設が遠隔地にある場合は、長い距離を移動しなければなりません。農村部と都市部の医療格差は非常に大きく、ジャニスはそれも身をもって体験しています。

「病院までの距離が遠いこともあるし、医療者の間でも疾患が十分に知られていないこともあります」と、彼女は話します。診断には、複数の専門医とのやり取りが何回も必要になることもあります。「時間と知識、そして何が原因なのかを調べる覚悟のある医師を見つけなければならないのです」

ジャニス・ストライダム

「最初に手の腫れに気づいてから確定診断を受けるまでに6年かかりました。とても長い時間に感じました。痛みはあるのに、その原因がわからないのです」

ジャニス・ストライダム chief executive officer of HAE International South Africa

タケダのRare Diseases for Global Medical Affairsでヘッドを務めるニール・インハーバM.D., FRCPSは、新しい診断ソリューションの開発によって、HAEなどの希少疾患と共に生きる人に有意義な変革をもたらすことができていると語ります。

「タケダの研究者は、迅速な診断・治療が困難な場所でもHAEのタイムリーな診断を可能にする、シンプルかつ包括的な乾燥血液スポット検査を開発しました」と、彼は話します。「このSpotHAEプログラムは、韓国、中国、ポーランド、イタリアの4カ国で試験的に実施されています」

2022年に開始して以来、中国だけで1,300件以上のスポット検査が行われ、そのうちの30%はHAEの可能性を示唆していました9。このプログラムは、診断と治療を迅速に行う一助となっています。

「私たちの目標は、今後10年以内にHAEの診断にかかる時間を半分にすることです」と、ニールは話します。「しかし、それだけで希少疾患と共に生きる人々の健康格差をなくすという課題を解決することはできません。多面的なアプローチが必要です」

タケダでRare Genetics and Hematologyのグローバル プログラム リードを務めるビョルン・メルガードM.D., Ph.D.は、「タケダは200年以上にわたり、いまだ満たされていない患者さんのニーズに応えるため、イノベーションに注力してきました。そのためにタケダと同じ価値観を持つ社外パートナーとも連携しています」と付け加えました。

ビョルンは、重要な社外パートナーの一つとして、74カ国1,000以上の希少疾患患者団体からなる非営利団体の欧州希少疾患協議会(EURODIS)を挙げます。「EURODISは、早期介入を重要視しています。新生児スクリーニング検査プロジェクト『Screen4CareGo to https://screen4care.eu/』は、大きなインパクトをもたらすパートナーシップの好例といえます」と、ビョルンは話します。

希少疾患の80%が遺伝によるもので、その大半が子どもにも影響を与えると推定されています10。そこでScreen4Careでは、遺伝子検査とデジタル技術により診断までの時間を短縮することを目指しています。

ジャニスは、子どもの頃からこうしたコミュニティとつながっておくことが重要と考えています。彼女は現在、患者支援組織HAE International(HAEi)South Africaの最高経営責任者として、HAEとともに生きる人々を支援するために自分の知識を共有しています。

「患者支援グループとして私たちが注力している一つは、子どもたちです」と、彼女は話します。「子どもたちが診断を受けられないまま貴重な数年間を失うことがないように、解決策を探しています」

  1. Nguengang Wakap S, et al. Estimating cumulative point prevalence of rare diseases: analysis of the Orphanet database. Eur J Hum Genet 28, 165-173 (2020).
  2. Orphanet. New scientific paper confirms 300 million people living with a rare disease worldwide. [Internet; cited 2023 Dec]. Available from: https://download2.eurordis.org/pressreleases/PrevalencePaper_JointStatement_170919_Final.pdfGo to https://download2.eurordis.org/pressreleases/PrevalencePaper_JointStatement_170919_Final.pdf
  3. Banerji A, et al. Current state of hereditary angioedema management: a patient survey. Allergy Asthma Proc. 36(3):213-7 (2015).
  4. Jolles S, et al. A UK national audit of hereditary and acquired angioedema. Clin Exp Immunol. 175(1):59-67 (2014).
  5. Marwaha S, et al. A guide for the diagnosis of rare and undiagnosed disease: beyond the exome. Genome Med 14, 23 (2022). Available from: https://genomemedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13073-022-01026-w#:~:text=The%20average%20time%20for%20accurate,decade%20%5B8%2C%209%5DGo to https://genomemedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13073-022-01026-w#:~:text=The%20average%20time%20for%20accurate,decade%20%5B8%2C%209%5D
  6. Schöffl C, et al. Hereditary angioedema in Austria: prevalence and regional peculiarities. J Dtsch Dermatol Ges 17:416–423 (2019).
  7. Zanichelli A, et al. Misdiagnosis trends in patients with hereditary angioedema from the real-world clinical setting. Ann Allergy Asthma Immunol. 117:394–398 (2016).
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  9. Takeda data on file. Hereditary Angioedema spotHAE Report, Dec 2022-Oct 2023.
  10. Bick D, et al. Newborn Screening by Genomic Sequencing: Opportunities and Challenges. Int. J. Neonatal Screen 8, 40 (2022).