健康の公平性に資するコミュニティ・ヘルス・ワーカー | 武田薬品
健康の公平性に資するコミュニティ・ヘルス・ワーカー
ラズ・オルテガさんは、コミュニティ・ヘルス・ワーカー(CHW)として活躍してきた日々を、誇りにしています。彼女は米国マサチューセッツ州ベッドフォードで、医療や歯科、ソーシャルサービス、メンタルヘルスサービスなど、必要とされるさまざまなサービスと人をつなげるために尽力してきました。
ラズさんは、CHWが果たす特別な役割を表すエピソードを共有してくれました。
「2017年に、ハリケーン『マリア』ですべてを失った一家が、プエルトリコから私たちの街へやってきました。彼らは幸いにも、良いアパートを見つけることができました。床にラグが敷かれていましたが、ベッドはありませんでした。私は彼らの母国語を話せたので、ベッドが必要かどうかを尋ねましたが、その母親は不要だと答えました。もともとベッドを使っていなかったし、ラグと枕があれば十分というのです」
ラズさんは、これまでに受けたトレーニングと経験から、批判は禁物とわかっていました。「私たちの社会の基準に合わないからといって、彼らの生活スタイルを批判すると信頼関係は築けません。彼らの文化を尊重すべきです」
CHWと心肺蘇生トレーニングの準備をするラズ・オルテガさん
ラズさんやほかのCHWの体験談から、健康格差をなくすためには医療従事者と同様にCHWの重要性がよくわかります。
こうした結び付けこそが、人々が質の高い医療を受けられるように活動する国際的な非営利組織である、Partners In Health(PIH)が最も大切にしていることです。PIH米国のエグゼクティブディレクターを務めるケイティ・ボルバック氏は、PIHの活動はCHWによって支えられていると言います。
PIH米国 エグゼクティブディレクターのケイティ・ボルバックさん
「CHWは優れた教育者であり、ナビゲーターであり、提唱者であり、調整役です。私たちは、CHWから大きな刺激を受け、彼らに道を示してもらっています。当組織で働く1万9,000人のスタッフのうち1万人が、CHWとして世界で活躍しています」とケイティさんは言います。
タケダがPIHに注目したのも、この組織がコミュニティ中心のケアモデルを持っていたからです。タケダとPIHは2017年、地域の保健担当者の能力向上をはかり、健康格差解消に持続的に取り組むために協力していくこととしました。両者のグローバルパートナーシップが始まって以来、PIHは健診や診断などの医療サービスを提供し、コミュニティで暮らす800万以上の人々に貢献してきました。
ジュリー・キム U.S. ビジネスユニット プレジデントは、タケダとPIHのアプローチには共通点があると指摘します。
ジュリー・キム U.S. ビジネスユニット プレジデントおよびU.S.カントリーヘッド
「タケダには、患者さんを中心に革新性を高め、患者さんのニーズを傾聴し、治療方法を模索してきたという長い歴史があります。自分たちの想定から物事を始めることはありません。PIHも同様です。PIHはコミュニティのニーズを聞き、彼らが住む場所で会って話を聞くことを大切にしています。そして、そのプロセスに欠かせないのがCHWの存在です」
タケダとPIHは先日、これまでの学びを米国で生かすため、そしてそれをマサチューセッツ州から始めるため、互いに協力し合うパートナーシップに踏み出しました。タケダはライフサイエンス企業としてこの州で最大クラスであり、地域レベルでのポジティブな影響をもたらすことにコミットしています。
タケダのグローバルでの支援を受けて 、そして、今度はここ米国のマサチューセッツでも支援を受けられるということを嬉しく思います。PIHとタケダはともに、コミュニティ中心の医療システムを築く上で、CHWの重要性を理解しています
PIH米国 エグゼクティブディレクターのケイティ・ボルバックさん
マサチューセッツ州では、人種や民族、社会経済的状況、その他の要因により、健康アウトカムが大きく異なります。Blue Cross Blue Shield of Massachusetts FoundationとHealth Equity Compactのレポートによると、同州の有色人種のコミュニティでは、避けられたはずの疾患による医療費負担額が年間15億ドルにもなります。さらにこの負担額は増加傾向にあるため、何も対策を講じなければ2050年までには年間110億ドルを越えると、この研究では推計されています。 1
PIHは、ニューベッドフォードを含めマサチューセッツ州のさまざまなコミュニティにチームを持っています。コミュニティと関係者の参画を重視した公平性への取り組みを推進しています。たとえば、Massachusetts Association of Community Health Workers(MaCHW)への支援を通してCHWのプレゼンスを高め、州の政策を前進させることも、そうした取り組みのひとつです。
リス・レディック U.S. health equity, corporate social responsibility, and philanthropyバイスプレジデント
「COVIDでの経験やPIHが世界中で展開してきた活動を通して信頼できるコミュニティメンバーが信頼できる医療情報を共有し、人々をリソースにつなげるというこのモデルが本当に機能することがわかりました 。それは、患者さんのより良い転帰にもつながり得るものです」とクリス・レディックは述べ、次のように続けました。「私たちはPIHとの国際的な活動からこのアプローチを米国内、そして私たち自身の地域にも適応しようとしているのです」
PIHのケイティさんも次のように述べています。「タケダのグローバルでの支援を受けて 、そして、今度はここ米国のマサチューセッツでも支援を受けられるということを嬉しく思います。PIHとタケダはともに、コミュニティ中心の医療システムを築く上で、CHWの重要性を理解しています」
リスティーナ・セント・シール・キマニ PIHマサチューセッツ州ヘッド
PIHマサチューセッツ州責任者であるクリスティーナ・セント・シール・キマニ氏も「CHWはコミュニティ中心ケアの典型例です 」と述べています。
ラズさんのエピソードは、まさにそれを伝えてくれるものでした。ラズさんは現在、ニューベッドフォード市保健局のプログラムディレクターとして、他の組織と協力してCHWへのトレーニングや支援を行い、地域の人々が必要なサービスやリソース、ケアにつながれるよう尽力しています。
ラズさんは言います。「これこそが、CHWが目指す架け橋なのです」
Banner image: Community Health Worker Isabel Gomez Hernandez surveys community members in New Bedford to assess their health care needs. Photo: Zack DeClerk / PIH