生成AI活用で申請書類の精度を高める | 武田薬品

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生成AI活用で申請書類の精度を高める

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2025年2月18日

医薬品の承認申請では、申請書類の質の高さが重要ということが、最近の調査から分かっています。米国のメディカルライター協会が、32名の承認審査官を対象に行った2022年の調査によると、不明瞭・不正確、そして冗長な文書は、審査官の評価能力を阻害する可能性が示されました。また、次回以降の申請時に否定的な先入観を生じさせたり、承認プロセスの遅れにつながる可能性も判明しました1。承認にかかる期間を短縮できれば、医薬品をより迅速に患者さんに届けることにつながります。

では、どうすれば申請書類の質を向上できるのでしょうか。その答えは、生成AIにあるかもしれません。

「私たちは社内で生成AIツールの開発を進めています」と、タケダのメディカルライティングのヘッドであるディラン・ハリスは述べています。「私たちには240年以上続くイノベーションの歴史があります。自社でソリューションを開発すれば、ニーズに合わせやすいのはもちろん、柔軟かつスムーズに機能や範囲を拡張できます」

ディラン・ハリス

タケダ メディカルライティングヘッドのディラン・ハリス

ディランが率いるチームは、米国や中国、日本にわたり100名を超えるメディカルライターで構成されています。このチームは、オンコロジー、ニューロサイエンス、消化器系および炎症性疾患の各疾患領域ユニット、市販後製品部門の4グループに分かれています。同チームは現在、規制当局への申請書類作成の効率化や、記載情報の明確化や簡素化、整合性の向上を目的に、臨床試験データの分析を自動化するプロトタイプを検証しています。

「スピードが重要なのは明らかです」と、ディランは言います。「メディカルライターが平均20週間かけて手作業で行う分析や集計プロセスを、およそ半分の時間でできるようになるでしょう」

分析レベルの向上も期待できます。「プロトタイプは、重要なこととそうでないことを区別できるようです」と、ディランは言います。「簡潔で明確な情報を提供できるようになることで、特定のタイプの間違いを排除できる可能性があります。規制当局が知りたい情報に対応することにもつながり、追加情報の提出要求を減らすこともできるでしょう」

さらに、米国連邦行政規則集の治験統括報告書テンプレートの第11項(Section 11)に即したプロトタイプの検証も開始したとディランは話します。第11項は、米国食品医薬品局の要求事項である有効性分析を記載するセクションです。「これは最も難易度の高いセクションです。これでうまくいけば、他のセクションも対応可能と考えています」

プロトタイプの検証を通じて、このツールのメリットをすでに感じているメディカルライターもいます。その一人であるザック・ワイルドモアは次のように報告しています。「70ページのデータを、ほぼ瞬時に2つの文に要約してくれました。正確さも驚くべきものでした」。また、ターニャ・ボレンバッハは次のように述べています。「このプロトタイプは、事実に基づいた文章を読みやすい文体で作成することができます」

「規制当局に提出する文書の作成とレビューには時間がかかる上、人によるムラやミスが起こりやすい状態にあります。一方で生成AIには、文章の理解や生成、改良能力があるため、このプロセスに革命がもたらされるかもしれません」

McCulley-Cuppanのグレゴリー・カッパン

グレゴリー・カッパン

メディカルライティング専門家のグレゴリー・カッパン

コンサルタント会社McCulley-Cuppanのオーナーであり、メディカルライティングの専門家のグレゴリー・カッパンさんは、効率と正確性、コンプライアンスの向上という観点から、生成AIが申請書類の作成とレビューに変革をもたらす可能性があると述べています。同氏は最近のLinkedInへの投稿で、「規制当局に提出する文書の作成とレビューには時間がかかる上、人によるムラやミスが起こりやすい状態にあります。生成AIの文章理解や作成、洗練化能力を用いることで、このプロセスに革命がもたらされるかもしれません」と記しています2

しかし、この技術はまだ初期段階にあるという点と、重要な課題についてさらなる検討が必要という点を同氏は指摘しています。例えば、構造化されていないデータの対処方法や、患者さんのセンシティブデータや機密情報の取り扱い、説明責任や透明性の確保などです。

ヤエル・ゴジン

タケダ ノンクリニカル ライティング&システムズ ヘッドのヤエル・ゴジン

「アクセス制御とデータプライバシーの確保は極めて重要です。生成AIが関与する範囲に明確なガイドラインを設け、人間による監視が当該プロセスにおいて必須とすることが重要です」と、同氏は述べています。

私たちが用いるツールの進化には、人間の関与が欠かせません。ノンクリニカル ライティング&システムズ ヘッドを務めるヤエル・ゴジンは次のように述べています。「私たちの目標は、人間の専門知識をツールに置き換えることではなく、マシンが持つ高度な能力を活用することで、その専門知識をさらに強化し、優れた成果を生み出すことです」

ジョン・チャン

タケダ ShinrAI AI/MLセンター長のジョン・チャン

ShinrAI AI/ML(ShinrAI=信頼)センター長であるジョン・チャンは次のように加えています。「タケダのメディカルライターは今後も、データ分析結果の文書化、編集、レビュー、検証を行いますが、執筆および修正の全体的な時間は大幅に短縮できるでしょう」

生成AIを適切にトレーニングすることで、信頼性と整合性がより高い書類を迅速に提出できるようになる可能性があります。私たちが正しい方向に進んでいるかどうかを現在検証中です。

*McCulley-Cuppanは、ベンダーとしてタケダから報酬を受けています