ちょっとした会話から新たなAIアシスタントが誕生するまで | 武田薬品
ちょっとした会話から新たなAIアシスタントが誕生するまで
2023年2月初旬のある日のこと、週末はどんよりとした曇り空になると天気予報が告げていました。マット・ジミソンが暮らすインディアナポリスでは、憂鬱な冬空は珍しくありません。彼は5カ月前にタケダに入社して以来、Intelligent Servicesチームのリードとして仕事を楽しんでいました。しかし、ある会話をきっかけに、天気のことなどすっかり忘れることとなりました。
その会話とは、Intelligent Workplaceチームのヘッドであるデイブ・フェルドマンとしたもので、AIデジタル・アシスタントの独自開発についてでした。数カ月前から、AIがニュースで取り上げられており、マットとデイブは自社にとって新しいものを生み出す道を見つけたのです。
「どんどん意欲が湧いてきて、それから3日間はこればかりに集中していました」と、マットは言います。「いったん始めてしまうと、作り上げることしか考えられなくなったのです」
ミッションは無事に完了しました。その翌週には早速、デジタル・アシスタントのプロトタイプを運用することになりました。
「私たちが開発に取りかかったときは、myAibouがこれほど価値を発揮するとは思っていませんでした」と、マットは言います。「myAibouは単に 『かっこいい』から役に立つものへとすぐに進化したのです」
Intelligent Servicesリード
マット・ジミソン
大がかりな仕事
どうしてこれほど短期間でできたのでしょうか?
マットとデイブは、会話の中で生成AIについて議論しました。生成AIとは、記事や画像、動画などのクリエイティブなコンテンツを生成できる人工知能の一種です。この数カ月前には、最先端のAIチャットボットが一般公開されており、2人はすでにチームメイトとともに新しいテクノロジーを試し、使い方や注意点を学んでいました。彼らの生成AIに対する懸念の一つに、入力したデータが知らないうちに社外に公開されてしまう可能性がありました。
そして2人は、生成AIを活用して情報を保護する新しいテクノロジーについても話し合いました。一般公開されているシステムを使用すると、ユーザーのデータがサードパーティのシステムに組み込まれてしまう可能性があります。だからこそ、データが流出する心配なく同様のテクノロジーを利用できるようする必要があると、デイブは指摘します。
「マットも私も、これは大がかりな仕事になるだろうと思いました」と、デイブは述べました。「とりあえず、何ができるか試してみようと私は言ったのです」
日本で培われた価値観を尊重する
その結果、新たなデジタル・アシスタントが誕生しました。デイブはそれを、日本語にちなんで「myAibou(=私の相棒)」と名付けました。myAibou は、タケダの従業員が与えた情報やプロンプト以外、タケダのデータにアクセスすることはありません。
「私たちは、タケダが日本で培ってきた価値観を尊重し、重要視していました」と、デイブ は語ります。「2世紀以上にわたり、タケダはイノベーションの最前線に立ち、患者さんの満たされないニーズに対応し続けてきました。新しいツールを創り出すことは楽しくてエキサイティングなことですが、そこには大きな目的があります。私たちがより効果的・効率的になることで、より多くの人へ貢献できるようになるのです」
デイブとマット、そして彼らのチームメンバーは、はじめの数日間でmyAibouをあれこれと試し、最も有効な使用法を研究しました。myAibouにメールの下書きをさせたり、コンテンツの分析をさせたりしました。そして、タケダでともに働く仲間にmyAibouを少しずつ紹介し、色々と試してみるよう勧めました。
彼らはその後、myAibouがスライドの下書きやスケジュール管理に有効というフィードバックを受けました。myAibouを使用する従業員は、数カ月にわたって増え続けました。それを聞いたガブリエレ・リッチ チーフ データ&テクノロジー オフィサーは、デイブのチームをサンディエゴのカンファレンスに招待しました。デイブのチームは2023年5月、myAibouをタケダのリーダーシップメンバーに発表しました。
「タケダは、データ・デジタル&テクノロジーを日々の業務に積極的に取り入れようとしており、myAibouはその模範となる例です」と、ガブリエレは述べました。「私たちのような組織は、テクノロジーの進歩に遅れないよう、迅速にイノベーションを起こす必要があります。そうすることで、逆境に負けないしなやかな強さを備えた企業になれるのです」
「ともに働く仲間のために革新的なツール開発に取り組んだ結果、生産性が向上しました。また、新たなテクノロジーを探求する上で安全な環境が整い、やればできるという成長に向けたマインドセットが醸成されました。これらは将来的に、患者さんへの革新的なソリューション提供につながるでしょう」と、彼は続けて語りました。「このチームを誇りに思うと同時に、新しいテクノロジーを受け入れてくれた従業員の皆さんにも感謝します」
レオ・バレッラ チーフ テクノロジー オフィサーは、この取り組みは先陣を切るもので、私たちは数歩先を進んでいる状況だと説明します。
「私たちのチームは、新たなテクノロジーが利用可能になるとすぐにmyAibouの開発に着手しました。そして、従業員もmyAibouの使い方をすぐに学びました」と、レオは言います。「従業員からのフィードバックをもとに、私たちはすでにmyAibou・第二世代の開発に取り組んでいます。タケダ全体の想像力を活用しているのです」
myAibouの次世代版は、「ミーティングをより良いものにする」ことに焦点を当てていると、デイブは話します。
「昔のミーティングの書き起こしにアクセスできるなど、過去の振り返りができるよう検討しています」と、デイブは語ります。「何をすれば効率化に貢献できるか、その方法を模索しています」
マットは、デイブとの会話を振り返りながら、myAibouのプロジェクトが短期間でここまで進んだことを誇りに感じていました。
「私たちが開発に取りかかったときは、myAibouがこれほど価値を発揮するとは思っていませんでした」と、マットは言います。「myAibouは単に 『かっこいい』から役に立つものへとすぐに進化したのです」