Arrowhead社と武田薬品工業、α-1アンチトリプシン欠乏症による肝疾患の患者を対象としたfazirsiranの臨床第2相SEQUOIA試験のトップライン結果の公表について
Arrowhead社と武田薬品工業、α-1アンチトリプシン欠乏症による肝疾患の患者を対象としたfazirsiranの臨床第2相SEQUOIA試験のトップライン結果の公表について
fazirsiran投与例の50%で線維化が改善
肝臓におけるZ-AAT蓄積量が中央値で94%、肝内封入体が68%減少
試験治療下で発現した有害事象はfazirsiran群とプラセボ群で同等
試験結果は、The New England Journal of Medicineに掲載された非盲検試験(AROAAT-2002)と一致
Arrowhead社は本日2023年1月9日午前8:30 (東部標準時)より投資家向け電話会議を開催
武田薬品工業株式会社(以下「武田薬品」)とArrowhead Pharmaceuticals Inc. (以下「Arrowhead社」)は、このたび、α-1アンチトリプシン欠乏症による肝疾患(AATD-LD)の治療薬として開発中のfazirsiran (TAK-999/ARO-AAT) の臨床第2相SEQUOIA試験のトップライン結果を公表しましたのでお知らせします。両社はまた、武田薬品とArrowhead社が共同で計画し、武田薬品が実施する予定の臨床第3相試験の概要も公表しました。本日発表した内容以外の SEQUOIA試験の結果は今後、学会または論文で発表する予定です。Arrowhead社は本日、2023年1月9日午前8時30分(東部標準時)より投資家向け電話会議を開催し、第2相試験データのレビューを行います。会議のウェブキャストへの参加を希望される方は、www.arrowheadpharma.comのInvestorsのページの下にあるEvents and Presentationsからアクセスしてください。
フロリダ大学消化器・肝臓・栄養学科のVirginia Clark, M.D., M.S.は、「α-1アンチトリプシン欠乏症による肝疾患に対しては現在治療薬がありません。本日発表されたSEQUOIA試験の結果は、このまれな遺伝子性疾患に対する安全で効果的な治療法を探し求めている患者さんや医師にとって、大いに勇気づけられる内容です。私たちは、正しく折り畳まれない蛋白が肝臓に蓄積することが本疾患の発現における重要なステップと考えており、この蛋白の産生を阻止する治療薬があれば、この毒性のある蛋白を肝臓から取り除くことができ、また疾患の治癒につながる可能性があると考えています」と述べています。
<SEQUOIA試験の主な結果>
試験開始時点で肝線維化がみられる患者16名にfazirsiranを25 mg、100 mgまたは200 mgの用量で投与したところ、変異α-1アンチトリプシン蛋白(Z-AAT)の血清中濃度が用量依存的に減少し、第48週時点の平均低下率はそれぞれ74%、89%および94%でした。3用量群のいずれも肝臓内のZ-AATの劇的な減少がみられ、ベースライン以降の肝生検実施時の減少率の中央値は94%でした。また、組織のPAS-D検査で評価するZ-AAT蓄積度の指標である肝内封入体のスコアの平均値は、ベースライン時点の5.9からベースライン以降の肝生検実施時には2.3に低下しました。門脈炎症も患者の42%で改善し、悪化がみられた患者の割合はわずか7%でした。肝線維化については、患者の50%でMETAVIRスコアが1ポイント以上改善しました。
これに対し、プラセボ群のうちベースライン時点で線維化がみられた患者さん9名の第48週の評価では、血清中Z-AAT濃度に意義ある変化はなく、肝臓内のZ-AATは26%増加、PAS-Dで評価する肝内封入体に意義ある変化はありませんでした。また門脈炎症に改善がみられた患者はなく、44%で悪化しました。ベースライン以降の肝生検実施時には肝線維化は22%で悪化、38%で改善を認めました。組織検査による線維化の評価にはばらつきがあることが以前より明らかにされてきましたが、今回の所見もこのことを再認する内容でした。現在計画中の臨床第3相試験のような被験者数が大きい試験では、プラセボ投与例の改善率は、未治療のAATD-LD患者の自然経過を検討した研究で得られている結果と近似する数値となると考えられます。
fazirsiranの忍容性は良好で、現時点まで報告されている試験治療下で発現した有害事象はfazirsiran群とプラセボ群で同等でした。いずれの患者群においても、試験薬の投与中止、投与中断や試験中止に至った有害事象は認められませんでした。fazirsiranを1年間投与した患者さんの呼吸機能検査の所見には、プラセボ群との比較で用量依存的な変化や臨床上意義ある変化はみられませんでした。
これらのデータは、The New England Journal of Medicine 誌に掲載された臨床第2相AROAAT-2002非盲検試験の結果と一致しています。SEQUOIA試験の詳細は、今後学会で発表する予定です。
Arrowhead社の最高医学責任者(CMO)のJavier San Martin, M.D.は、「fazirsiranの投与を受けた患者さんでは、治療期間中に、肝線維化、肝臓におけるZ-AAT蓄積、PAS-Dで評価する肝内封入体、肝酵素をはじめとする各種マーカーに劇的かつ有望な変化が認められました。これらの一貫した臨床第2 相試験データより、fazirsiranは将来、AATDによる肝疾患に対する初の治療戦略となる本剤を医師に提供できるようになれるとの確信をさらに強めています。SEQUOIA試験にご参加いただいた患者さんと試験責任医師の方々、また武田薬品の素晴らしいパートナーの支援と協力に感謝しています」と述べています。
<fazirsiranの臨床第3相試験の実施>
武田薬品は今月、METAVIRステージF2~F4の線維化がみられるα-1アンチトリプシン欠乏症による肝疾患の治療におけるfazirsiranの有効性と安全性の評価を目的とする無作為化二重盲検プラセボ対照臨床第3相試験TAK-999-3001を開始する予定です。約160名の患者さんが1:1の比率で無作為化を受け、fazirsiranまたはプラセボの投与を受けます。試験の主要評価項目は、METAVIRステージF2またはF3の繊維化患者さんを対象に、第106週に実施する肝生検でMETAVIRステージがベースラインから1ステージ以上の改善がみられることとします。
武田薬品のGastroenterology Therapeutic Area Unit HeadのChinwe Ukomadu, M.D., Ph.D.は、「説得力ある臨床第2相試験データにより、私たちはfazirsiranのようなRNAi薬がAATDに伴う肝疾患の改善をもたらす可能性があるとの確信をさらに強めました。私たちは今、武田薬品の消化器領域における豊富な専門知識を活かし、fazirsiranを患者さんにお届けするという目標を掲げ、臨床第3相試験を効率よく進めてまいります」と述べています。
<fazirsiranについて>
fazirsiranは、変異型α-1アンチトリプシン蛋白の産生を低減する目的で設計されたファースト・イン・クラス薬剤となる可能性のあるRNA干渉(RNAi)治療候補薬で、希少な遺伝子性疾患であるAATDによる肝疾患の治療薬として現在開発中です。AATDの患者さんでは、肝臓で蓄積するZ-AATが進行性肝疾患の原因であると考えられています。炎症をもたらすZ-AAT蛋白質の産生が低下することで、肝疾患の進行が阻止されると期待され、肝臓の再生や修復に至る可能性もあります。米国では、fazirsiranはAATD-LDの治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)より2021年7月にブレークスルー・セラピー指定(BTD)、2018年2月にオーファンドラッグ指定を受けています。
<臨床第2相SEQUOIA試験について>
SEQUOIA (NCT03945292)は、AATD-LDの患者さん42名におけるfazirsiran (TAK-999, ARO-AAT)の安全性、忍容性と薬力学的作用の評価を目的とするプラセボ対照反復投与臨床第2相試験です。患者さんは、fazirsiranの25 mg群(n=9)、100 mg群(n=8)、200mg群(n=9名)またはプラセボ群(n=14)に参加しました。適格例は全て試験薬の投与前に生検を受け、肝線維化がみられる患者さん25名は第48週にも生検を受けました。治療を受けた患者さんには、非盲検継続投与試験(OLE)に参加して治療を継続する機会を提供しました。
<武田薬品とArrowhead社の提携とライセンス契約について>
2020年10月、Arrowhead社と武田薬品は、fazirsiranの開発に向けた提携およびライセンス契約を発表しました。契約の条件に基づき、武田薬品とArrowhead社はfazirsiranの共同開発を行い、承認が得られた場合は、米国では利益と費用を両社が折半する形で、共同で事業化を行います。武田薬品は全世界における販売戦略を主導するとともに、米国外の地域でのfazirsiranの独占的販売権を取得します。Arrowhead社は、売上収益に対する20~25%の段階的なロイヤルティを受け取ります。Arrowhead社は、3億米ドルの契約一時金を受領し、開発、申請、販売マイルストーンとして最大7億4000万ドルを受け取る権利を有します。
<α-1アンチトリプシン欠乏症関連肝疾患について>
α1アンチトリプシン欠乏症(AATD)は、希少な遺伝子性疾患で、小児患者と成人患者では肝疾患、成人患者では肺疾患を伴うことがあります。AATDの有病率は、米国では3,000~5,000人に1人、欧州では2,500人に1人とされており、患者さんの35%に肝疾患が現れます。αアンチトリプシン(AAT)は、主に肝細胞で合成、分泌される蛋白質です。この蛋白質は、正常な結合組織を分解する酵素を阻害する働きをもちます。AATDで最も頻繁にみられるZ型遺伝子変異は1つのアミノ酸が置換される変異で、作られた蛋白質は正しく折りたたまれることができません。この変異蛋白質は十分に分泌されずに肝細胞にとどまり、小球を作ります。これにより肝細胞が傷つき、線維化や肝硬変が現れ、肝細胞がんのリスクが高まります。
ホモ接合型のPiZZ遺伝子型をもつ患者さんでは、体内で機能するAATがきわめて少なく、肺疾患や肝疾患を引き起こします。肺疾患の主な治療法は、AAT強化療法です。肝疾患はAAT強化療法では効果がみられず、肝疾患を対象とする治療薬は存在しません。現在、治癒が望める治療法は肝移植しかありませんが、肝移植は合併症発現率や死亡率が高い手技であり、大きなアンメットニーズがあります。
<武田薬品について>
武田薬品工業株式会社(TSE:4502/NYSE:TAK)は、日本に本社を置き、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーです。武田薬品は、「すべての患者さんのために、ともに働く仲間のために、いのちを育む地球のために」という約束を胸に、革新的な医薬品を創出し続ける未来を目指します。研究開発においては、オンコロジー(がん)、希少遺伝子疾患および血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、消化器系疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤とワクチンにも注力しています。武田薬品は、研究開発能力の強化ならびにパートナーシップを推し進め、強固かつ多様なモダリティ(治療手段)のパイプラインを構築することにより、革新的な医薬品を開発し、人々の人生を豊かにする新たな治療選択肢をお届けします。武田薬品は、約80の国と地域で、医療関係者の皆さんとともに、患者さんの生活の質の向上に貢献できるよう活動しています。
詳細については、https://www.takeda.com/jp/をご覧ください。
<Arrowhead社について>
Arrowhead Pharmaceuticalsは、疾患の原因となる遺伝子の働きを止めることで難治性疾患の治療につながる医薬品の開発を進めています。RNAケミストリーと効率的な送達技術を活用してRNA干渉機構を刺激し、標的とする遺伝子に対して速やかかつ徹底的で長期間にわたるノックダウンを行います。RNA干渉(RNA interference, RNAi)は、細胞内にある機構の一種で、特定の遺伝子の発現を阻止することで特定の蛋白質の産生に影響を及ぼします。Arrowhead社のRNAiベースの治療薬は、生体内にある遺伝子抑制(遺伝子サイレンシング)のプロセスを活用しています。詳細については、www.arrowheadpharma.comをご覧ください。ツイッター@ArrowheadPharmaでの発信も併せてご覧ください。ニュースの配信をご希望の方は、http://ir.arrowheadpharma.com/email-alertsをご覧ください。
<留意事項>
本留意事項において、「ニュースリリース」とは、本ニュースリリース(添付資料及び補足資料を含みます。)において武田薬品工業株式会社(以下、「武田薬品」)によって説明又は配布された本書類、口頭のプレゼンテーション、質疑応答及び書面又は口頭の資料を意味します。本ニュースリリース(それに関する口頭の説明及び質疑応答を含みます。)は、いかなる法域においても、いかなる有価証券の購入、取得、申込み、交換、売却その他の処分の提案、案内若しくは勧誘又はいかなる投票若しくは承認の勧誘のいずれの一部を構成、表明又は形成するものではなく、またこれを行うことを意図しておりません。本ニュースリリースにより株式又は有価証券の募集を公に行うものではありません。米国 1933 年証券法に基づく登録又は登録免除の要件に従い行うものを除き、米国において有価証券の募集は行われません。本ニュースリリースは、(投資、取得、処分その他の取引の検討のためではなく)情報提供のみを目的として受領者により使用されるという条件の下で(受領者に対して提供される追加情報と共に)提供されております。当該制限を遵守しなかった場合には、適用のある証券法違反となる可能性がございます。
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<Arrowhead社の1995年民事証券訴訟改革法に基づくセーフハーバー声明>
本ニュースリリースには、1995年の民間証券訴訟改革法の「セーフハーバー」規定の意味における将来の見通しに関する記述が含まれています。本リリースにおける歴史的情報を除く全ての記述は、将来予測に関する記述とみなされる可能性があります。上記の一般性を制限することなく、「可能性がある(may)」、「だろう(will)」、「期待する(expect)」、「信じる(believe)」、「予想される(anticipate)」、「望む(hope)」、「意図する(intend)」、「計画する(plan)」、「企画する(project)」、「かもしれない(could)」、「見込む(estimates)」、もしくは「継続する(continues)」などの用語は、将来予測に関する記述を特定するために用いられます。また、当社の将来の業績、事業の傾向、予測される薬事申請や臨床プログラムの結果等の製品パイプラインや製品候補に関する予測、他社との連携の見込みや利益、もしくはその他の将来の出来事や状況に関する描写は、将来予測に関する記述です。これらの記述は、現在の期待に基づいており、この日付の時点でのみ述べています。当社の実際の結果は、将来の見通しに関する記述で示される内容は大きく異なる場合があり、現在進行中のCOVID-19パンデミックが当社の事業に及ぼす影響、製品候補の安全性と有効性、規制当局による判断やその時期、規制による臨床プログラムの遅延の期間と影響、当社の事業資金の調達能力、将来のマイルストーンとライセンス料の受領の可能性とタイミング、科学研究の将来の成功、医薬品候補の開発と事業化における当社の能力、臨床試験の開始と完了のタイミング、市場における急速な技術の進歩、当社の知的財産権の執行など、様々な要因が不確定要素が影響します。上記以外の当社の事業、事業業績および財務状況に影響を与える可能性のある重要なリスク要因については、年次報告(Form 10-K)、四半期報告(Form 10-Q)ならびに米国証券取引委員会に随時提出する資料に示しています。私たちは、新しい出来事や状況を反映するために将来の見通しに関する記述を更新または改訂する義務を負いません。
References:
Strnad P, Mandorfer M, Choudhury G, et al. Fazirsiran for Liver Disease Associated with Alpha1-Antitrypsin Deficiency. N Engl J Med. 2022;10.1056/NEJMoa2205416. doi:10.1056/NEJMoa2205416.
Strnad P. Reduction of intra-hepatic Z-AAT synthesis by fazirsiran decreases globule burden and improves histological measures of liver disease in adults with alpha-1 antitrypsin deficiency. Poster presented at: The International Liver Congress; June 2022; London, UK