オーストリア政府および同国の技術研究所との連携による、医薬品産業初の天然ガスフリー蒸気発生技術の産業応用について
オーストリア政府および同国の技術研究所との連携による、医薬品産業初の天然ガスフリー蒸気発生技術の産業応用について
- ウィーンにある主要製造拠点で、二酸化炭素排出量を最大90%削減する業界初の産業プロジェクト
- オーストリアで作られた革新的な高温ヒートポンプシステムによって、より持続可能な医薬品製造を実現
- 100%自然冷媒のみで作動する先駆的な蒸気発生ヒートポンプを採用
当社は、このたび、オーストリア連邦気候保護・環境・エネルギー・モビリティ・イノベーション・テクノロジー省(BMK)、気候エネルギー基金およびオーストリア技術研究所(AIT)との連携によるプロジェクトAHEAD(Advanced Heat Pump Demonstrator)を発表しましたのでお知らせします。AHEADは、オーストリアの科学技術革新(FTI)イニシアティブ「エネルギーフラグシップ地域(Flagship region Energy)」の一環としての産業用新エネルギー(NEFI)プロジェクトです。
AHEAD研究プロジェクトでは、天然ガスを使用しない蒸気発生ヒートポンプを初めて生産工程に導入し、ウィーンにある当社の主要製造拠点において、自然冷媒のみを使用した最大90%の二酸化炭素(CO2)排出量の削減を目指しています。本プロジェクトは、高温ヒートポンプ研究において主導的な役割を果たすオーストリアによって支えられており、医薬品産業全体ならびにCO2排出量の削減を目指す他産業の企業およびセクターへの実例となることを目指します。
本プロジェクトでイノベーションをもたらしたのは、蒸気発生ヒートポンプです。これは100%自然冷媒のみで動作し、蒸気圧縮機と併用することでこれまでで最高の熱回収温度を達成します。AHEADシステムにより、当社の製造に必要な蒸気供給の温度である184℃を超える200℃~260℃の温度に到達することができます。
当社のグローバルエンジニアリングのヘッドであるグンター・バウムガルトナー(Gunter Baumgartner)は、「当社では、環境負荷低減への取り組みを効果的に促進するためには、連携が欠かせないと考えています。連携により、当社は現在利用可能な最高の技術を活用できるようになります。あらためて、私たちの環境への姿勢を体現するこの先駆的なプロジェクトを支援できることを大変光栄に思います」と述べています。
当社のグローバルエンバイロメント&サステナビリティのヘッドであるマイケル・フィッシャー(Michael Fisher)は、「2035年までにグローバル事業における温室効果ガス排出量ネットゼロを達成するためには、大胆な行動と、可能性の限界を超えることが必要です。AHEADのような革新的なプロジェクトは、私たちのネットゼロへ向けた取り組みに欠かせない要素です」と述べています。
オーストリア連邦気候保護・環境・エネルギー・モビリティ・イノベーション・テクノロジー省(BMK)エネルギー・環境テクノロジーの責任者であるVolker Schafflerは、「オーストリアは2040年までに気候変動に左右されない気候中立国になること を目指して取り組みを進めています。この重要なマイルストーンを達成するには、協力して取り組む必要があり、オーストリアの産業界の役割が肝要です。武田薬品との連携は、私たちがどのようにして革新的なコンセプトを実現できるかを示す好例です。産業、研究および行政が共にソリューションを生み出し、気候およびエネルギー目標の達成に必要な環境が揃った時、オーストリア国民を含めあらゆる人が恩恵を受けることができるのです。私たちの提案は共通の気候目標を達成する主要な手段であると考えています」と述べています。
医薬品製造におけるエネルギーの大量消費
医薬品製造には、冷却、化学的・生物学的プロセス開始、また熱と蒸気を使った無菌製造環境を確保するために、大量のエネルギーを消費します。
これまで、医薬品製造プロセスにおける熱需要の大部分が、主に天然ガスによって作り出されてきました。AHEADプロジェクトでは、天然ガスがSustainable Process Heat社の革新的な蒸気発生ヒートポンプシステムに置き換わり、蒸気圧縮機と併用することで11 bar(a)/184℃の蒸気を発生させます。ウィーンにある当社の主要製造拠点では最大90%のCO2排出量削減と1年あたり7ヵ月間のCO2排出量完全ゼロを達成します。これは1年あたり1,900トンのCO2に相当し、2035年までに当社事業における温室効果ガス排出量ネットゼロを達成するという目標の達成に寄与します。
研究プロジェクトの一環として、オーストリアおよび世界にある他のタケダ拠点にもAHEADシステムを導入するためのコンセプトを策定します。さらに、製紙産業、化学産業および食品産業などのエネルギー消費量が高い他の重要な産業分野についても、AHEADシステムを用いた脱炭素の可能性を模索中です。
AITエネルギーセンターは、包括的システムモデルに基づき、AHEADシステムおよび熱源(冷熱供給からの余熱)の最適な運用戦略を開発します。また、CO2排出量削減の可能性を探る新規アプローチを策定中です。これらの実現のために、プロセス要件および予想されるプロセス変更、プロジェクトの経験に基づく高温ヒートポンプの学習曲線ならびに統計データを組み合わせて、総合的な視点で検討を進めています。
AHEADの技術基盤
AHEADプロジェクトの技術的基盤は、ウィーンにある当社の製造拠点で既に稼働中の、100%自然冷媒を使用したCO2ニュートラルエネルギーセンターにあります。これらの冷媒は高効率で、CO2を排出しません。
また、敷地内の冷熱を集中管理することで、熱回収も同時に行うことができます。冷却システムの余熱を再利用し、ヒートポンプを用いて65℃~70℃に加熱しています。このシステムは現在、敷地内の水の加熱に使用されています。
運用開始後、AHEADは特殊なヒートポンプにより水加熱システムから熱を回収し、その熱で蒸気を発生させる予定です。AHEADは2024年末に運用を開始する予定であり、AITによる研究目的での本プロジェクトの最終評価は2025年末に計画されています。本プロジェクトは気候エネルギー基金から資金提供を受けています。
<武田薬品の環境保全に対する取り組みについて>
当社は社内の省エネ対策、再生可能エネルギーの使用の拡大、高品質のカーボンオフセットの購入に継続的に取り組むことにより、2020年(2019年度のGHG排出量を対象)から引き続きバリューチェーン全体(スコープ1、2、および現在推定されているスコープ3のGHG排出量1)のカーボンニュートラルを実現しています。また、当社は、事業活動によるGHG排出量(スコープ1および2)を2035年度までにネットゼロに、バリューチェーン全体のGHG排出量(スコープ3、ただし現在の推計値1)を2040年度までにネットゼロとする当社の目標を加速させることを2022年に発表しました2。
また、脱炭素の取り組みに加え、当社はウォーター・スチュワードシップ、責任ある廃棄物処理、生物多様性保全活動を含む天然資源保護に関しても取り組んでいるほか、製品開発段階においても環境サステナビリティの原則を取り入れ、ライフサイクル全体を通じて製品や包装が環境に与える影響を最小限に抑えています。
環境の持続可能性を推進する上での武田薬品の優先事項である環境保全に関する詳細については、以下をご覧ください。https://www.takeda.com/corporate-responsibility/reporting-on-sustainability/planet/
<武田薬品のオーストリアでの環境投資について>
オーストリアにおいて、当社は大規模な環境プロジェクトから小規模の環境活動まで幅広く投資を行っています。太陽光発電システムによる再生可能エネルギーからの電力供給と廃棄物削減のための包括的プログラムに加え、エネルギー技術に関して供給システムを常に最適にサポートするために、10年以上前にオンラインモニタリングシステムを確立しました。さらに、新たなソリューションや技術も継続的に検討・導入しています。各投資プロジェクトは、持続可能で気候変動に配慮したものであるかどうかを検証しています。従業員の意識向上活動や生物多様性の専門グループもその一翼を担っています。医薬品の生産工程に持続可能性が組み込まれている例として、廃熱回収プロセス、再生可能エネルギーによる電力供給、フロンガス不使用(CFCフリー)のエネルギー効率の高い冷媒への切り替えによる冷却システム数の削減などが挙げられます。当社は2022年にウィーンにある製造拠点で使用されている持続可能な医薬品包装に対する取り組みが評価され、世界包装機構(WPO)からワールドスター・アワードを受賞しました。2022年12月、当社はMüller Transporte社とともにウィーン地区における医薬品製造のための定期輸送に使用されるeトラックによるパイロットプロジェクトを立ち上げました。
<武田薬品について>
武田薬品工業株式会社(TSE: 4502/NYSE: TAK)は、日本に本社を置き、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーです。研究開発において、オンコロジー(がん)、希少遺伝子疾患および血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、消化器系疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤とワクチンにも注力しています。武田薬品は、研究開発能力の強化ならびにパートナーシップを推し進め、強固かつ多様なモダリティ(治療手段)のパイプラインを構築することにより、革新的な医薬品を開発し、人々の人生を豊かにする新たな治療選択肢をお届けします。武田薬品は、約80の国と地域で、医療関係者の皆さんとともに、患者さんの生活の質の向上に貢献できるように活動しています。詳細についてはhttps://www.takeda.com/jp/をご覧ください。
<武田薬品 オーストリアについて>
オーストリアにおいて、当社は医薬品バリューチェーン全体(研究開発、血漿応用、製造、販売)にわたって活動を行っています。武田薬品は医薬品分野ではオーストリア最大の雇用を生み出しています。4,500名を超える従業員(うち約3,000名がウィーン勤務)が日々、医薬品をオーストリアから世界中の患者さんにお届けし、革新的な医薬品事業に従事しています。同国における当社の開発・製造拠点は、ウィーン、リンツ、オルト・アン・デア・ドナウにあります。当社のオーストリアの製品ポートフォリオは、オンコロジー、血友病・遺伝性疾患、消化器系疾患、免疫系疾患などの分野で患者さんに貢献しています。詳細についてはhttps://www.takeda.com/de-at/をご覧ください。
報道用写真:http://www.publichealth.at/portfolio-items/Dampf-ohne-Gas/
<重要な注意事項>
本注意事項において、「ニュースリリース」とは、本ニュースリリースに関して武田薬品工業株式会社(以下、「武田薬品」)によって説明又は配布された本書類並びに一切の口頭のプレゼンテーション、質疑応答及び書面又は口頭の資料を意味します。本ニュースリリース(それに関する口頭の説明及び質疑応答を含みます)は、いかなる法域においても、いかなる有価証券の購入、取得、申込み、交換、売却その他の処分の提案、案内若しくは勧誘又はいかなる投票若しくは承認の勧誘のいずれの一部を構成、表明又は形成するものではなく、またこれを行うことを意図しておりません。本ニュースリリースにより株式又は有価証券の募集を公に行うものではありません。米国 1933 年証券法の登録又は登録免除の要件に基づいて行うものを除き、米国において有価証券の募集は行われません。本ニュースリリースは、(投資、取得、処分その他の取引の検討のためではなく)情報提供のみを目的として受領者により使用されるという条件の下で(受領者に対して提供される追加情報と共に)提供されております。当該制限を遵守しなかった場合には、適用のある証券法違反となる可能性があります。
武田薬品が直接的に、又は間接的に投資している会社は別々の会社になります。本ニュースリリースにおいて、「武田薬品」という用語は、武田薬品及びその子会社全般を参照するものとして便宜上使われていることがあり得ます。同様に、「当社(we、us及びour)」という用語は、子会社全般又はそこで勤務する者を参照していることもあり得ます。これらの用語は、特定の会社を明らかにすることが有益な目的を与えない場合に用いられることもあり得ます。
<将来に関する見通し情報>
本ニュースリリース及び本ニュースリリースに関して配布された資料には、武田薬品の見積もり、予測、目標及び計画を含む武田薬品の将来の事業、将来のポジション及び業績に関する将来見通し情報、理念又は見解が含まれています。将来見通し情報は、「目標にする(targets)」、「計画する(plans)」、「信じる(believes)」、「望む(hopes)」、「継続する(continues)」、「期待する(expects)」、「めざす(aims)」、「意図する(intends)」、「確実にする(ensures)」、「だろう(will)」、「かもしれない(may)」、「すべきであろう(should)」、「であろう(would)」、「かもしれない(could)」、「予想される(anticipates)」、「見込む(estimates)」、「予想する(projects)」などの用語若しくは同様の表現又はそれらの否定表現を含むことが多いですが、それに限られるものではありません。これら将来見通し情報は、多くの重要な要因に関する前提に基づいており、実際の結果は、将来見通し情報において明示又は暗示された将来の結果とは大きく異なる可能性があります。その重要な要因には、日本及び米国の一般的な経済条件を含む武田薬品のグローバルな事業を取り巻く経済状況、競合製品の出現と開発、世界的な医療制度改革を含む関連法規の変更、臨床的成功及び規制当局による判断とその時期の不確実性を含む新製品開発に内在する困難、新製品及び既存製品の商業的成功の不確実性、製造における困難又は遅延、金利及び為替の変動、市場で販売された製品又は候補製品の安全性又は有効性に関するクレーム又は懸念、新規コロナウイルス・パンデミックのような健康危機が、武田薬品が事業を行う国の政府を含む武田薬品とその顧客及び供給業者又は武田薬品の事業の他の側面に及ぼす影響、買収対象企業とのPMI(買収後の統合活動)の時期及び影響、武田薬品の事業にとっての非中核資産を売却する能力及びかかる資産売却のタイミング、当社による省エネルギーへの取り組み及び将来の再生可能エネルギー又は低炭素エネルギー技術の発展による当社の温室効果ガス排出量の削減の程度、武田薬品のウェブサイト(https://www.takeda.com/jp/investors/sec-filings/)又はwww.sec.govにおいて閲覧可能な米国証券取引委員会に提出したForm 20-Fによる最新の年次報告書並びに武田薬品の他の報告書において特定されたその他の要因が含まれます。武田薬品は、法律や証券取引所の規則により要請される場合を除き、本ニュースリリースに含まれる、又は武田薬品が提示するいかなる将来見通し情報を更新する義務を負うものではありません。過去の実績は将来の経営結果の指針とはならず、また、本ニュースリリースにおける武田薬品の経営結果及び情報は武田薬品の将来の経営結果を示すものではなく、また、その予測、予想、保証又は見積もりではありません。
<医療情報>
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1実際のスコープ3の排出量は測定が困難であり不透明性が残ることからも、これらは取り組みを進めていく上で今後克服すべき重要な課題です。
2当社は、カーボンニュートラルと排出量ネットゼロを温室効果ガスプロトコルに基づき定義しています。当社のカーボンニュートラルに対する取り組みや、環境保全へのプログラムの詳細は、以下をご覧ください。https://www.takeda.com/corporate-responsibility/reporting-on-sustainability/planet/