武田薬品工業、Zedira社およびDr. Falk Pharma社と提携・ライセンス契約を締結ファースト・イン・クラスのセリアック病治療薬の開発について
武田薬品工業、Zedira社およびDr. Falk Pharma社と提携・ライセンス契約を締結
ファースト・イン・クラスのセリアック病治療薬の開発について
- 武田薬品は米国とその他の国々(欧州、カナダ、オーストラリアおよび中国を除く)におけるZED1227/TAK-227の独占的開発・販売権を取得
- 本契約により、武田薬品のセリアック病パイプラインに3つ目の新薬候補物質が追加
武田薬品工業株式会社(以下、「武田薬品」)とZedira GmbH(以下、「Zedira社」)および Dr. Falk Pharma GmbH (以下、「Dr. Falk Pharma社」)は本日、セリアック病治療薬として臨床第2b相試験を実施中のZED1227/TAK-227の開発に関する提携・ライセンス契約を締結しましたのでお知らせいたします。セリアック病はグルテンを摂取すると小腸に炎症や損傷が現れる重篤な自己免疫疾患ですが、TAK-227はセリアック病患者さんのグルテンに対する免疫反応を予防することで、ファースト・イン・クラスの治療薬となる可能性がある開発品目です。
武田薬品の消化器系治療領域部門のヘッドを務めるChinwe Ukomadu, M.D., Ph.D.は、「Zedira社およびDr. Falk Pharma社と連携してTAK-227の開発を進めることで、グルテン除去食を続けても症状が改善せず、腸管障害が進行する患者さんに、意義のある効果をもたらす可能性があります。武田薬品は、臨床開発段階に進んだセリアック病に対する3つの新薬候補物質を有する企業として、セリアック病の画期的治療薬の開発の最前線に立ち、この生涯つづく困難な自己免疫疾患の患者さんに複数の治療薬をお届けすべく邁進しております」と述べています。
TAK-227(ZED1227)は、組織トランスグルタミナーゼ(TG2)と呼ばれる酵素を選択的に阻害する、経口投与が可能な低分子化合物です。TG2は、胃や小腸において、グルテンから免疫原性のあるグルテンペプチドを産生する分解反応に関与していますが、TAK-227は、この調節不全の状態にあるトランスグルタミナーゼを標的とすることで、グルテンに特異的なT細胞の活性化を介した疾患の発症プロセス、すなわちグルテンに対する免疫反応を防ぎ、小腸の粘膜損傷を予防します。臨床第2a相プルーフ・オブ・コンセプト(POC)試験では、TAK-227の予防効果を検討するために、患者さんが6週間にわたりグルテンを含む食品を摂取した結果、同剤の十二指腸粘膜保護効果と症状予防効果が確認されています(発表論文はこちらからご参照ください)。また、TAK-227は安全で忍容性が高いことが確認されました。
Dr. Falk Pharma社のMedicine & PharmaceuticsのManaging Directorを務めるRoland Greinwald, Ph.D.は、「セリアック病の患者さんは、健康と日常生活の質に大きな悪影響があるため、適切な治療選択肢が待ち望まれています」と述べています。Zedira社のMartine Hils, Ph.D.は、「武田薬品は、消化器系疾患領域の研究開発に高い専門性をもち、広範囲で事業を展開しています。セリアック病治療薬の開発に熱心に取り組む企業であり、TAK-227を患者さんにお届したい私たちにとって理想的なパートナーです」と付け加えました。
本契約に基づき、武田薬品と Dr. Falk Pharma社は、セリアック病に対するTAK-227のグローバル臨床試験を実施します。武田薬品は、米国とその他の国々(欧州、カナダ、オーストラリアおよび中国を除く)におけるTAK-227の独占的開発・販売権を取得します。Zedira社とDr. Falk Pharma社は、契約一時金を受領するとともに、開発や販売の達成に応じたマイルストンおよび売上に応じたロイヤルティを受領する権利を有します。ZED1227はZedira社が創出した化合物で、Dr. Falk Pharma社は2011年にZedira社から欧州におけるZED1227のライセンスを取得しており、同プログラムの前臨床開発および臨床開発を担当しています。
武田薬品は、セリアック病治療薬となる可能性のある開発品目のポートフォリオ構築を進めています。武田薬品は、TAK-227のほかにも2つのセリアック病の新薬候補物質を開発中で、これら2つはいずれもこのほど臨床第2相試験に入りました。TAK-062は、ベスト・イン・クラスの治療薬になる可能性のある強力なグルテン分解酵素で、その構造はセリアック病治療薬用としてコンピュータで人工的に設計されました。TAK-101は、ファースト・イン・クラスの治療薬となる可能性のある免疫調整作用をもつナノ粒子製剤で、グリアジンと呼ばれるタンパク質を含んでいます。グリアジンに特異的なT細胞の活性化を防止することでセリアック病患者さんのグルテンに対する免疫寛容を誘導するよう設計されています。
<セリアック病について>
セリアック病は、慢性腸管炎症を特徴とする全身性の免疫介在性疾患で、遺伝的素因を持つ人々が食事でグルテンを摂ると発症します。1 セリアック病の全世界での有病率は1%程度で、女性、セリアック病患者の血縁者や、他の免疫介在疾患の患者さんの有病率は特に高いことが知られています。セリアック病の有病率は世界的に上昇しつつありますが、多くの患者さんが未確認もしくは未診断の状態にあります2,3,4 。患者さんのグルテン許容量には、個人差があります。許容量が50 mg/日を超える患者さんもいれば、10 mg/日で粘膜異常が現れる人や、わずか1 mg/日の長期接種で粘膜傷害が現れる患者さんもいます5,6,7。セリアック病は腹痛、下痢、悪心、嘔吐などの症状を引き起こします。セリアック病の長期的な合併症として、栄養障害、骨粗鬆症の進行、神経系障害、生殖関連障害などがあります。現在、セリアック病を適応症として承認された治療薬はありません。現在ある唯一の治療法は、グルテン除去食です。グルテンが含まれる小麦、大麦、ライ麦を避ける食事を生涯にわたり続ける必要がありますが、グルテン除去食が常に有効とは限りません。8
<武田薬品について>
武田薬品工業株式会社(TSE:4502/NYSE:TAK)は、日本に本社を置き、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーです。武田薬品は、「すべての患者さんのために、ともに働く仲間のために、いのちを育む地球のために」という約束を胸に、革新的な医薬品を創出し続ける未来を目指します。研究開発においては、オンコロジー(がん)、希少遺伝子疾患および血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、消化器系疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤とワクチンにも注力しています。武田薬品は、研究開発能力の強化ならびにパートナーシップを推し進め、強固かつ多様なモダリティ(治療手段)のパイプラインを構築することにより、革新的な医薬品を開発し、人々の人生を豊かにする新たな治療選択肢をお届けします。武田薬品は、約80の国と地域で、医療関係者の皆さんとともに、患者さんの生活の質の向上に貢献できるよう活動しています。
詳細については、https://www.takeda.com/jp/をご覧ください。
<Zedira GmbHについて>
Zediraはドイツ・ダルムシュタットに拠点を置くバイオテクノロジー企業で、セリアック病をはじめとするトランスグルタミナーゼ関連疾患に力を入れ、自己免疫疾患、線維性疾患や血栓症領域における各種試薬、研究・開発用キットならびに臨床診断薬の開発、製造と販売を行っています。Zediraは、特許取得済みの各種の合成トランスグルタミナーゼ阻害薬に基づき、各種適応症における新薬候補のパイプラインを構築しました。ZED1227は、臨床開発段階に入った初の直接作用型トランスグルタミナーゼ阻害薬です。ZED1227は、ドイツの官民ファンドであるハイテク起業基金のポートフォリオ企業です。
<Dr. Falk Pharma GmbHについて>
Dr. Falk Pharmaは、炎症性腸疾患や好酸球性食道炎などの胃腸障害、ならびに原発性胆汁性胆管炎などの肝胆道系障害の治療薬の開発と販売を60年間にわたり行ってきた企業です。Dr. Falk Pharmaは、消化器・代謝内科の国際的専門家として、医師、科学者と患者さんをつなぎ、多様で強力な新たなアプローチを創出しています。Dr. Falk Pharmaは、治療法の意義ある改善と患者さんの健康と生活の向上を目指し、前臨床段階および臨床段階の研究を進めています。グローバルな存在感のある家族経営企業として、欧州およびオーストラリアに10の子会社を有し、今も成長を続けています。本社とR&D拠点をドイツ・フライベルグに置き、主にドイツ、フランスとスイスの生産拠点にて医薬品の製造を行っています。世界各地に約990名の従業員を抱え、フライベルグでは218名が勤務しています。Dr. Falk Pharma に関する詳細は、ウェブサイトでご覧ください:https://drfalkpharma.com
<留意事項>
本留意事項において、「ニュースリリース」とは、本ニュースリリース(添付資料及び補足資料を含みます。)において武田薬品工業株式会社(以下、「武田薬品」)によって説明又は配布された本書類、口頭のプレゼンテーション、質疑応答及び書面又は口頭の資料を意味します。本ニュースリリース(それに関する口頭の説明及び質疑応答を含みます。)は、いかなる法域においても、いかなる有価証券の購入、取得、申込み、交換、売却その他の処分の提案、案内若しくは勧誘又はいかなる投票若しくは承認の勧誘のいずれの一部を構成、表明又は形成するものではなく、またこれを行うことを意図しておりません。本ニュースリリースにより株式又は有価証券の募集を公に行うものではありません。米国 1933 年証券法に基づく登録又は登録免除の要件に従い行うものを除き、米国において有価証券の募集は行われません。本ニュースリリースは、(投資、取得、処分その他の取引の検討のためではなく)情報提供のみを目的として受領者により使用されるという条件の下で(受領者に対して提供される追加情報と共に)提供されております。当該制限を遵守しなかった場合には、適用のある証券法違反となる可能性がございます。
武田薬品が直接的に、又は間接的に投資している会社は別々の会社になります。本ニュースリリースにおいて、「武田薬品」という用語は、武田薬品およびその子会社全般を参照するものとして便宜上使われていることがあり得ます。同様に、「当社(we、usおよびour)」という用語は、子会社全般又はそこで勤務する者を参照していることもあり得ます。これらの用語は、特定の会社を明らかにすることが有益な目的を与えない場合に用いられることもあり得ます。
<将来に関する見通し情報>
本ニュースリリース及び本ニュースリリースに関して配布された資料には、武田薬品の見積もり、予測、目標、計画及び、温室効果ガス排出量の削減目標を含む当社の将来の事業、将来のポジション及び業績に関する将来見通し情報、理念又は見解が含まれています。将来見通し情報は、「目標にする(targets)」、「計画する(plans)」、「信じる(believes)」、「望む(hopes)」、「継続する(continues)」、「期待する(expects)」、「めざす(aims)」、「意図する(intends)」、「確実にする(ensures)」、「だろう(will)」、「かもしれない(may)」、「すべきであろう(should)」、「であろう(would)」、「することができた(could)」、「予想される(anticipates)」、「見込む(estimates)」、「予想する(projects)」などの用語若しくは同様の表現又はそれらの否定表現を含むことが多いですが、それに限られるものではありません。これら将来見通し情報は、多くの重要な要因に関する前提に基づいており、実際の業績は、将来見通し情報において明示又は暗示された将来の業績とは大きく異なる可能性があります。その重要な要因には、当社による省エネルギーへの取り組みや、将来の再生可能エネルギー又は低炭素エネルギー技術の発展による当社の温室効果ガス排出量の削減、日本及び米国の一般的な経済条件を含む当社のグローバルな事業を取り巻く経済状況、競合製品の出現と開発、世界的な医療制度改革を含む関連法規の変更、臨床的成功及び規制当局による判断とその時期の不確実性を含む新製品開発に内在する困難、新製品および既存製品の商業的成功の不確実性、製造における困難又は遅延、金利及び為替の変動、市場で販売された製品又は候補製品の安全性又は有効性に関するクレーム又は懸念、新規コロナウイルス・パンデミックのような健康危機が、当社が事業を行う国の政府を含む当社とその顧客及び供給業者又は当社事業の他の側面に及ぼす影響、買収対象企業とのPMI(買収後の統合活動)の時期及び影響、武田薬品の事業にとってのノン・コア資産を売却する能力及びかかる資産売却のタイミング、当社のウェブサイト(https://www.takeda.com/jp/investors/sec-filings/)又はwww.sec.gov において閲覧可能な米国証券取引委員会に提出したForm 20-Fによる最新の年次報告書及び当社の他の報告書において特定されたその他の要因が含まれます。武田薬品は、法律や証券取引所の規則により要請される場合を除き、本ニュースリリースに含まれる、又は当社が提示するいかなる将来見通し情報を更新する義務を負うものではありません。過去の実績は将来の経営結果の指針とはならず、また、本ニュースリリースにおける武田薬品の経営結果は武田薬品の将来の経営結果又はその公表を示すものではなく、その予測、予想、保証又は見積もりではありません。
<医療情報>
本ニュースリリースには、製品に関する情報が含まれておりますが、それらの製品は、すべての国で発売されているものではなく、また国によって異なる商標、効能、用量等で販売されている場合もあります。ここに記載されている情報は、開発品を含むいかなる医療用医薬品を勧誘、宣伝又は広告するものではありません。
以上
1 Ludvigsson J, Leffler D, Bai J, et al. The Oslo definitions for coeliac disease and related terms. Gut. 2013 Jan;62(1):43-52.
2 Caio G, Volta U, Sapone A, Leffler DA, De Giorgio R, Catassi C, Fasano A. Celiac disease: a comprehensive current review. BMC Med. 2019 Jul 23;17(1):142.
3 King J, Jeong J, Underwood F, et al. Incidence of Celiac Disease Is Increasing Over Time: A Systematic Review and Meta-analysis. Am J Gastroenterol. 2020 Apr;115(4):507-525.
4 Al-Toma A, Volta U, Auricchio R, et al. European Society for the Study of Coeliac Disease (ESsCD) guideline for coeliac disease and other gluten-related disorders. United European Gastroenterol J. 2019 Jun;7(5):583-613.
5 Biagi F, Campanella J, Martucci S, Pezzimenti D, Ciclitira PJ, Ellis HJ, Corazza GR. A milligram of gluten a day keeps the mucosal recovery away: a case report. Nutr Rev. 2004 Sep;62(9):360-3.
6 Itzlinger A, Branchi F, Elli L, Schumann M. Gluten-Free Diet in Celiac Disease-Forever and for All? Nutrients. 2018 Nov 18;10(11):1796.
7 Akobeng AK, Thomas AG. Systematic review: tolerable amount of gluten for people with coeliac disease. Aliment Pharmacol Ther. 2008 Jun 1;27(11):1044-52
8 Symptoms & Causes of Celiac Disease. National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases. Available at: https://www.niddk.nih.gov/health-information/digestive-diseases/celiac-disease/symptoms-causes. Last reviewed: October 2020. Last accessed: June 2022