移植後の既存療法に対して抵抗性(抵抗性無しも含む)を示す難治性のサイトメガロウイルス(CMV)感染症の成人患者さんに対するmaribavirへの欧州医薬品評価委員会(CHMP)の肯定的見解について
移植後の既存療法に対して抵抗性(抵抗性無しも含む)を示す難治性のサイトメガロウイルス(CMV)感染症の成人患者さんに対するmaribavirへの欧州医薬品評価委員会(CHMP)の肯定的見解について
- 承認された場合、maribavirは移植後の既存療法に抵抗性(無しも含む)を示す難治性のCMV感染症の 成人患者さんの治療薬として欧州連合(EU)における最初で唯一のCMV特異的UL97プロテインキナーゼ阻害薬になる可能性がある1
- maribavirが従来療法と比較して投与8週終了時の主要評価項目について統計的に優れていることが示された臨床第3相SOLSTICE試験に基づく肯定的見解2
- CMVは、移植後に最もよくみられる感染症のひとつであり、移植臓器の喪失や移植不全などの深刻な状態になる可能性がある3.4
当社は、このたび、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品評価委員会(CHMP)が、造血幹細胞移植(HSCT) または固形臓器移植(SOT)後の、既存療法(ガンシクロビル、バルガンシクロビル、シドフォビル、ホスカルネットのいずれか1つ以上の前治療)に抵抗性(抵抗性無しも含む)を示す難治性のサイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症の成人患者さんを対象とした治療薬として、maribavirの承認を推奨しましたのでお知らせします。
欧州委員会(EC)は今回のCHMPの肯定的見解を検討し、今後数ヵ月間に販売承認に対する判断を下します。承認された場合、maribavirは欧州連合(EU)においてこの適応について初のCMV特異的UL97プロテインキナーゼ阻害薬となる可能性があります1。今回のCHMPの肯定的見解は、抵抗性(抵抗性無しも含む)を示す難治性のCMV感染患者さんの治療薬として従来の抗ウイルス療法(ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、シドフォビルのいずれか1つ以上の治療)に対するmaribavirの安全性および有効性が評価されたSOLSTICE試験に基づいています。
当社の希少疾患領域ヘッドであるダニエル・カラン(Daniel Curran)は、「移植後のケアは移植後の患者さんにとってきわめて重要であり、CMV感染は患者さんの良好な転帰を脅かす可能性があります。maribavirの販売承認に関する今回のCHMPの肯定的見解は、欧州全土における移植患者さんとその医療従事者のCMV治療環境の再定義とこのコミュニティの大きなアンメットニーズへの取り組みに向けた前向きな一歩です」と述べています。
CMVは移植後の患者さんが経験する最もよくみられる感染症のひとつであり、世界における推定発現率はSOT後の患者さんで16~56%、HSCT後の患者さんで30~70%です5.6。2019年に欧州および近隣諸国において34,000件超のSOT7と48,000件超のHSCT8が実施されました。
<CMVについて>
CMVはヒトに多く感染するベータヘルペスウイルスであり、さまざまな成人集団の40~100%で感染歴を認める血清学的エビデンスがあります9。CMVは通常、体内に潜伏し、無症候性ですが、免疫抑制期間中に再活性化することがあります。免疫機能が低下した人では、重篤な疾患を発現することがあり、こうした人にはHSCTやSOT5を始めとする、さまざまな種類の移植に関連した免疫抑制剤の投与を受けている患者さんも含まれます。世界における1年あたり推定20万件の成人移植のうち、CMVは移植後の患者さんが経験する最もよくみられるウイルス感染のひとつであり、推定発現率はSOTの患者さんで16~56%、HSCTの患者さんで30~70%です5,6。
移植後の患者さんでCMVが再活性化すると、移植臓器の喪失などの深刻な結果に至る可能性があり、極端な場合では死に至ることもあります3,4。移植後のCMV感染に対する既存の治療法は重篤な副作用を呈する可能性があり、用量調節を必要とすることや、ウイルスの複製を十分に抑制できない可能性があります11。さらに、既存の治療法では、投与のために入院を要することや入院が長期化することがあります10,11。
<maribavirについて>
経口投与可能な抗CMV化合物であるmaribavirはpUL97プロテインキナーゼとその天然基質を標的として阻害する最初で唯一の抗ウイルス剤です1。
2021年11月、maribavirは、移植後の成人患者さんと小児患者さん(12歳以上で体重が35 kg以上)における既存の抗ウイルス療法であるガンシクロビル、バルガンシクロビル、シドフォビルまたはホスカルネットに対して遺伝子型抵抗性(無しも含む)を示す難治性のCMV感染/感染症治療薬として米国食品医薬品局(FDA)により製品名「LIVTENCITYTM」として承認されました。欧州委員会の最終判断待ちであることに加え、他の世界各国の保健当局への申請が進行中です。
<SOLSTICE試験について>
TAK-620-303(SOLSTICE)試験(NCT02931539, EudraCT 2015-004725-13)は、従来の抗ウイルス療法(ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、シドフォビルのいずれか1つまたはその併用)に抵抗性(無しも含む)を示す難治性の造血幹細胞移植または固形臓器移植の両移植後のCMV感染患者さん352名を対象として、 maribavirまたは従来の抗ウイルス療法の有効性および安全性を評価するためのグローバル、多施設共同、無作為化、非盲検、実薬対照、優越性試験です。 2週間のスクリーニング期間後に、成人患者さんにmaribavir 400 mgを1日2回投与(n=235)または医師の投与による従来の抗ウイルス療法(n=117)のいずれかに2:1で無作為に割り付けし、最長8週間の治療期間の後さらに12週間フォローアップを行いました2。
本臨床試験の有効性主要評価項目は、少なくとも5日の間隔をあけ、連続した2つのサンプルのCMVのDNA濃度が定量検出限界(LLOQ)以下(8週時にCOBAS® AmpliPrep/COBAS® TaqMan® CMVで測定したCMVのDNA濃度が137 IU/mL未満)であることを確認することでした。主な副次評価項目は投与8週間終了時のCMVのDNA濃度がLLOQ以下かつCMV感染の症状がコントロールされていることであり、治療効果は16週目まで維持されました2。
<武田薬品について>
武田薬品工業株式会社(TSE:4502/NYSE:TAK)は、日本に本社を置き、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーです。武田薬品は、「すべての患者さんのために、ともに働く仲間のために、いのちを育む地球のために」という約束を胸に、革新的な医薬品を創出し続ける未来を目指します。研究開発においては、オンコロジー(がん)、希少遺伝子疾患および血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、消化器系疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤とワクチンにも注力しています。武田薬品は、研究開発能力の強化ならびにパートナーシップを推し進め、強固かつ多様なモダリティ(治療手段)のパイプラインを構築することにより、革新的な医薬品を開発し、人々の人生を豊かにする新たな治療選択肢をお届けします。武田薬品は、約80の国と地域で、医療関係者の皆さんとともに、患者さんの生活の質の向上に貢献できるよう活動しています。
詳細については、https://www.takeda.com/jp/をご覧ください。
<留意事項>
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<医療情報>
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*味覚障害は、味覚不全、味覚消失、味覚減退及び味覚異常を含むものと定義
§CMV感染症状コントロールの定義は、ベースライン時点で症候性の患者さんにおける組織侵襲性疾患もしくはCMV症状の消失ないし改善、またはベースライン時点で無症候性の患者さんにおける新たな症状がないこととしました。
以上
1 Avram S, et al. Novel drug targets in 2021. Nature Reviews Drug Discovery. 2022;21(5):328-328.
2 Avery R, et al. Maribavir for refractory cytomegalovirus infections with or without resistance post-transplant: results from a phase 3 randomized clinical trial. Clinical Infectious Diseases. 2022;75(4): 690–701.
3 Ramanan P, Razonable RR. Cytomegalovirus infections in solid organ transplantation: a review. Infection & Chemotherapy. 2013;45(3):260.
4 Camargo JF, Komanduri KV. Emerging concepts in cytomegalovirus infection following hematopoietic stem cell transplantation. Hematology/Oncology and Stem Cell Therapy. 2017;10(4):233-238.
5 Azevedo L, et al. Cytomegalovirus infection in transplant recipients. Clinics. 2015;70(7):515-523.
6 Styczynski J. Who is the patient at risk of cmv recurrence: a review of the current scientific evidence with a focus on hematopoietic cell transplantation. Infect Dis Ther. 2018;7:1-16.
7 Vanholder, R, et al. Organ donation and transplantation: a multi-stakeholder call to action. Nature Reviews Nephrology. 2021;17:554-568.
8 Passweg JR, et al. Hematopoietic cell transplantation and cellular therapy survey of the EBMT: monitoring of activities and trends over 30 years. Bone Marrow Transplant. 2021;56(7):1651-1664.
9 de la Hoz R. Diagnosis and treatment approaches to CMV infections in adult patients. Journal of Clinical Virology. 2002;25:1-12.
10 Chemaly RF, et al. Definitions of resistant and refractory cytomegalovirus infection and disease in transplant recipients for use in clinical trials. Clinical Infectious Diseases. 2019;68(8):1420-1426.
11 Martín-Gandul C, et al. Clinical impact of neutropenia related with the preemptive therapy of CMV infection in solid organ transplant recipients. Journal of Infection. 2014;69(5):500-506.