武田薬品、JCRファーマとハンター症候群に対する次世代治療薬の共同開発と事業化に向けた契約を締結
武田薬品、JCRファーマとハンター症候群に対する次世代治療薬の共同開発と事業化に向けた契約を締結
- JR-141は、静脈内投与で蛋白質を脳内に送達させ、ハンター症候群の身体症状を緩和し、神経障害性病変を改善する革新的な薬剤となり得ます。
- 武田薬品は、米国外(日本とアジア太平洋地域の一部を除く)でのJR-141の承認取得後は、当該地域において独占的に事業化を行います。
- 武田薬品は、グローバル第III相プログラムの完了後に米国での独占的事業化に関する独占的オプション権を取得します。
大阪および兵庫県芦屋市、2021年9月30日– 武田薬品工業株式会社 (以下、武田薬品)とJCRファーマ株式会社(以下、JCR)は本日、抗ヒトトランスフェリン受容体抗体とイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)の融合蛋白質でハンター症候群(ムコ多糖症2型、MPS II)の治療薬として現在開発中の次世代組換え融合タンパク質JR-141(INN: pabinafusp alfa)の特定地域における独占的な共同開発およびライセンス契約を締結しましたので、お知らせいたします。ハンター症候群は、IDSの欠損によって引き起こされる疾患で、様々な病型があります。JR-141は、JCRが有する血液脳関門(BBB)通過技術であるJ-Brain Cargo®を用い、治療効果をもつ酵素が血液脳関門(BBB)を通過し、脳内に直接到達して、ハンター症候群の身体症状と、認知機能障害の進行につながる神経障害性症状に働きかけるよう設計された物質です。
今回の独占的な共同開発およびライセンス契約により、武田薬品は、米国以外のカナダ、欧州およびその他の地域(日本と一部のアジア太平洋諸国を除きます)におけるJR-141の事業化を独占的に行います。JCRは、米国外のライセンスの契約一時金を受領するほか、開発と事業化の進捗に応じてマイルストーンフィー、ならびに製品化後の売上に応じて段階的に料率が設定されるロイヤルティを受け取る予定です。両社は、JCRが実施するグローバル第III相プログラムの完了後、可能な限り速やかに本治療薬を患者さんにお届けできるよう連携して活動します。
武田薬品は、本契約とは別に締結したオプション契約に基づき、当該第III相プログラムの完了時に米国におけるJR-141の事業化について独占的ライセンスを得る権利を取得します。
武田薬品の希少遺伝性・血液疾患領域ユニットヘッドのDan Curran M.D.は、次のように述べています。「武田薬品は、ハンター症候群の治療に持続的な向上をもたらすべく取り組んでいます。JR-141は、蛋白質が血液脳関門を通過しないという困難な課題を克服し、ハンター症候群の背景にある神経障害性症状を治療することで、患者さんの認知機能の維持や改善に役立てられる新たな薬剤送達方法を用いています。私たちはJCRと密接に連携し、酵素補充療法における専門知識を活かして、この医療に変革をもたらす可能性のある治療薬をできるだけ早く患者さんにお届けしたいと考えております」
JCRの代表取締役会長兼社長の芦田信は、次のように述べています。「JR-141を最大化させるという共通のゴールをもち、それを実現できるポジションにある武田薬品と共同できる機会を得てとても嬉しく思っています。私たちの使命は、ハンター症候群をはじめとする中枢神経系症状があるライソゾーム病の患者さんに、画期的な治療選択肢をできるだけ早くお届けすることにあります。JR-141は、血液脳関門を通過するバイオ医薬品として日本で初めて承認された医薬品です。私は、武田薬品とのパートナーシップを通じて世界中のハンター症候群の患者さんに新たな治療選択肢をできるだけ速やかにお届けすることで、この使命を果たせるようになると期待しています」
JR-141は、日本における非盲検第II/III相臨床試験において主要評価項目を達成し、第52週にわたる治療終了後の評価が行えた被験者の全員で神経障害性症状に対する効果を示すバイオマーカーである脳脊髄液中のヘパラン硫酸(HS)の有意の減少が認められました。標準的な酸素補充療法から本剤に切り換えた患者さんでは、全身症状のコントロールが維持されました。また、試験参加前に標準的な酵素療法剤の治療を受けていなかった患者さんでは、全身症状の改善が認められました。また、神経認知機能の発達を評価したところ、1年後の評価で25名中21名に年齢相当の機能の維持または改善が認められました。本試験では、試験薬に関連する重篤な有害事象の報告はありませんでした1。
JR-141について
JR-141は、抗ヒトトランスフェリン受容体抗体と、ハンター症候群の患者さんで欠損しているか活性が低下している酵素であるイズロン酸-2-スルファターゼの遺伝子組換え融合タンパク質です。JR-141は、JCRが有する血液脳関門通過技術であるJ-Brain Cargo®を用い、トランスフェリン受容体を介したトランスサイトーシスを用いて血液脳関門を通過させることで神経症状に対する効果を発揮することが期待されています。細胞への取り込みは、トランスフェリン受容体とマンノース-6-リン酸受容体を介して行われます。JCRは、分子設計の段階から非臨床、臨床にいたるまで必要なエビデンスを構築しながら開発を進めてきました。非臨床試験においては、JR-141がトランスフェリン受容体に対して高い親和性を示すことを確認するとともに、JR-141が血液脳関門を通過し神経細胞へ到達することを電子顕微鏡下において確認しました。
また、JCRは J-Brain Cargo®技術を用いることで、酵素が各脳組織に取り込まれることを確認しました。また、ハンター症候群モデル動物において、蓄積基質の減少を確認しました2,3,4。JR-141の臨床試験においては、中枢神経系の病変を引き起こす基質に対する本剤の有効性を評価するバイオマーカーである脳脊髄液中のヘパラン硫酸濃度の低下が認められ、非臨床試験で得られた結果と一致する結果を得ました。また、JCRが実施した臨床試験においては、神経認知機能に対するJR-141の良好な影響が認められました5,6,7,8。
JCRは、厚生労働省より「イズカーゴ®点滴静注用10mg」の販売名で承認を取得し、2021年5月より販売しています。
ハンター症候群について
ハンター症候群は、まれなライソゾーム病の一種で、体内のグリコサミノグリカン(GAGs)と呼ばれる物質の分解に必要な酵素であるイズロン酸-2-スルファターゼの欠損により生じる重度の消耗性疾患です9。患者さんはこの酵素をもたないためにGAGsが蓄積し、様々な症状・徴候が現れます9,10。ハンター症候群の患者さんの約3人に2人に進行性の認知機能障害が現れます11。ハンター症候群は、出生児の162,000人に1人の割合で現れ、ほぼ全例が男児です12。
武田薬品工業株式会社について
武田薬品工業株式会社(TSE:4502/NYSE:TAK)は、日本に本社を置き、自らの経営の基本精神に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーです。武田薬品は、「すべての患者さんのために、ともに働く仲間のために、いのちを育む地球のために」という約束を胸に、革新的な医薬品を創出し続ける未来を目指します。研究開発においては、オンコロジー(がん)、希少遺伝性・血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)および消化器系疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤およびワクチンにも注力しています。武田薬品は、研究開発能力の強化ならびにパートナーシップを推し進め、強固かつ多様なモダリティ(創薬手法)のパイプラインを構築することにより、革新的な医薬品を開発し、人々の人生を豊かにする新たな治療選択肢をお届けします。武田薬品は、約80の国と地域で、医療関係者の皆さんとともに、患者さんの生活の質の向上に貢献できるよう活動しています。詳細については、https://www.takeda.com/jp/をご覧ください。
JCRファーマ株式会社について
JCRファーマ株式会社(TSE 4552)は、世界中の希少疾病と遺伝性疾患とともに生きる人々の期待を再定義し、可能性を広げるグローバルスペシャリティーファーマです。日本において46年間にわたり事業を展開し、米国、欧州および中南米においても事業活動を拡大しています。私たちがもつ専門知識と独自技術を活用し、患者の皆さんの生活を向上させる次世代医薬品の研究開発と販売を行います。 日本国内で承認を取得した医療用医薬品には、成長障害治療薬、ファブリー病治療薬、移植片対宿主病治療薬、腎性貧血治療薬があります。現在世界各地において、ムコ多糖症I型(ハーラー症候群、ハーラー・シャイエ症候群、シャイエ症候群)、ムコ多糖症II型(ハンター症候群)、ポンペ病などの希少疾患の治療薬候補の開発を進めています。JCRは、患者さんの可能性を広げ、世界規模での医療の進歩を加速すべく活動しています。 信頼、自信と信念をコアバリューに掲げ、従業員、パートナー企業と患者さんを含む全てのステークホルダーのために活動します。Together we soar. 当社の詳細については、(https://www.jcrpharm.co.jp/index.html)をご覧ください。
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