世界をリードするライフサイエンス企業3社がCOVID-19の入院患者を対象としたCOMMUNITY試験への患者登録を開始
世界をリードするライフサイエンス企業3社がCOVID-19の入院患者を対象としたCOMMUNITY試験への患者登録を開始
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院患者の臨床的重症度に応じた複数の治療薬の有効性および安全性を評価
- ウイルスが蔓延している地域において患者登録ができるよう世界中の医療機関を治験実施施設に指定
- 製薬企業が協業して実施する初めてのアダプティブ・プラットフォーム試験
COVID R&D Allianceのメンバーである、Amgen Inc.(NASDAQ: AMGN、以下「アムジェン社」)、武田薬品工業株式会社(TSE:4502/NYSE:TAK、以下「武田薬品」)、およびUCB(Euronext BR: UCB、以下「UCB社」)は、このたび、COMMUNITY(COVID-19 Multiple Agents and Modulators Unified Industry Members)試験に最初の患者を登録しましたので、お知らせします。COMMUNITY試験は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者を対象とした複数の治療薬候補の検討が可能な、無作為化二重盲検プラセボ対照アダプティブ・プラットフォーム試験です。
COVID-19による死者数が世界で百万人を超え、感染者数が世界規模で再び急増している中で、ライフサイエンス企業は、COVID-19による入院患者の重症度を軽減できる可能性のある治療薬の特定に向けて緊急の取り組みを進めています。COMMUNITY試験は、COVID-19やその関連症状に対する治療候補薬、新規抗体医薬品、抗ウイルス薬の開発加速に向けて膨大な時間、知見、および企業リソースを注ぎ込んでいる世界トップクラスの医薬品企業およびバイオテクノロジー企業20社以上が参画するCOVID R&D Allianceのメンバーによって設計され実施される初めてのプラットフォーム試験です。
アムジェン社の研究開発担当Executive Vice PresidentであるDavid M. Reeseは、「この油断のならないウイルスは世界中で急速に広がるため、医師は、活発な病状がみられ、病状の進行に伴いさまざまな症状が認められる入院患者さんを治療するための選択肢を必要としています。当社は、他社との連携により、ワクチンが広く利用可能となる前にCOVID-19の治療が必要な患者さんの命を救う可能性のある治療選択肢を見出したいと考えています」と述べています。
COMMUNITY試験では、試験を進める中で複数の治療薬候補の追加、排除、および同時検討ができるアダプティブデザインを採用しており、1つの共通のプラセボ対照群に対して複数の候補薬が比較検討されます。アダプティブデザインを採用することにより、試験は効率化され、試験の実施が加速されるとともに、パンデミックに対処し得る治療薬の探索のための時間が節約されます。COMMUNITY試験で検討される最初の候補薬は、免疫調整薬です。将来的には、抗ウイルス薬など他の治療薬が試験に追加される可能性があります。
本試験の計画書およびグローバルでの治験実施は、COVID-19治療薬の試験で障壁となりうる問題に対処できるよう設計されました。例えば、地域ごとの症例数の増減を予測した上で治験実施施設を決定することや、一部の医療機関および医療システムに集中しがちな治験依頼を平準化することなどが含まれます。COMMUNITY試験では、米国、ブラジル、メキシコ、ロシア、南アフリカなどの国におけるグローバル治験実施医療機関を指定します。このような地理的多様性により、症例が局所的に急増した場合でも、治験を継続することが可能になります。COMMUNITY試験は、治験を簡素化することで、より迅速に治療選択肢をお届けし、入院患者さんの治療にお役立ていただくことを目指します。
UCB社のExecutive Vice President兼Chief Scientific OfficerであるDhavalkumar Patelは、「COVIDは一国に留まる話ではないため、課題や成功事例、知見をリアルタイムで共有することは不可欠です。専門知識やリソースを共有することで、治療にあたる医療関係者の皆さんに有望な治験薬を提供し、予断を許さない状況にある患者さんを救いたいと考えています」と述べています。
コントロール不良の血管および免疫炎症反応は、COVID-19の重症患者にみられる顕著な症状であることが確認されています。このような患者さんでは、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や脳卒中、死亡のリスクが高まるおそれがあります。COMMUNITY試験に追加される最初の治療薬は、以下の通りで、免疫反応またはそれによって生じる炎症を抑制またはコントロールする可能性に基づいて選択されました。これら治療薬のうち、COVID-19やその関連症状の治療薬としてFDAやEMAをはじめとする保健当局から承認されているものはなく、いずれも臨床試験の段階にあります。
- アムジェン社のオテズラ®(一般名:apremilast):免疫反応による炎症を抑制する可能性があります
- 武田薬品のlanadelumab:静脈内注射製剤で、カリクレイン-キニン系の調整によりブラジキニン産生を抑制することにより、炎症を軽減する可能性があります
- UCB社のzilucoplan:臨床段階の治療候補薬ですが、ARDSの原因となる免疫系の過剰活性化を抑制する可能性があります
オテズラは今週、COMMUNITY試験での検討が開始されました。lanadelumabとzilucoplanは今後数週間以内に検討が開始される予定です。今後数ヵ月の間に、他の抗ウイルス薬、免疫調整薬、および血管作動薬が試験に追加される可能性があります。
COMMUNITY試験では、COVID-19の入院患者を対象とした治療薬の検討を進めています。これには、継続的なケア、酸素補給、非侵襲的換気療法または高流量酸素療法、あるいは侵襲的機械換気または体外式膜型人工肺(ECMO)のいずれかを必要とする可能性のある、COVID-19の確定診断を受けた患者が含まれます。本試験では、集中治療室での治療を必要とする患者さんおよび集中治療室には入っていないが入院が必要な患者の両方を登録しています。これにより、COVID-19の患者さんが辿る症状の変遷においてどのような治療介入が有効であるかについて理解を深めることを目指します。
<COMMUNITY試験について>
COMMUNITY試験は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS CoV 2)によって引き起こされる疾患であるCOVID-19の入院患者に対する治療候補薬の評価を目的とした、無作為化二重盲検プラセボ対照アダプティブ・プラットフォーム試験です。本試験では、臨床的重症度段階を定めた8段階のスケールで重症度がレベル2からレベル5とされるCOVID-19の入院患者に対する有効な治療薬を特定することを目指しています。
COMMUNITY試験の主要評価項目は、試験開始から29日目までに、再入院の必要がない臨床的回復が確認されるまでの期間、すなわち臨床的重症度段階スケールで重症度がレベル6、7、または8に達するまでの期間とします。主な副次評価項目は、無酸素での回復、ベースラインからの改善またはベースラインから退院相当までの改善、総死亡率とします。
患者は、二重盲検下で治療候補薬+標準治療またはプラセボ+標準治療のいずれかに1:1の割合で無作為に割り付けられます。プラセボ+標準治療に割り付けられた患者は、その後検討が開始された治療薬に対応するプラセボに1:1の割合で無作為に割り付けられます。
<COVID R&D Allianceについて>
COVID R&D Allianceは、2020年3月、従来の開発モデルにとらわれず、 企業間の関係性に関係なく治療薬候補の研究を加速する取り組みとして立ち上げられました。メンバー企業は、臨床試験データとリアルワールド・エビデンスを共有し、開発初期にある候補物質についてもクラウドソーシングを行い、COVID-19に対して効果を示す可能性のある作用機序と治療薬の特定を進めています。本グループはまず、既に作用が明らかとなっている治療薬や開発後期の治験薬の検討に特化し、治療選択肢を必要としている入院患者に向けた治療薬の開発を進めています。現在は、他用途の化合物の転用、開発初期の化合物の検討を進めています。メンバー企業は、今後数ヵ月の間に40の臨床試験で所見を得られる見込みです。
COVID R&D Allianceに関する詳細については、www.CovidRDAlliance.comをご覧ください。
以上