潰瘍性大腸炎治療剤「エンタイビオⓇ」の日本における製造販売承認取得について

潰瘍性大腸炎治療剤「エンタイビオ」の日本における製造販売承認取得について


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2018年7月2日

-日本における中等症から重症の潰瘍性大腸炎の患者さんに新たな治療選択肢が追加

当社は、このたび、潰瘍性大腸炎治療剤「エンタイビオ」(一般名:ベドリズマブ、開発コード:MLN0002、以下「エンタイビオ」)について、厚生労働省より中等症から重症の活動期の潰瘍性大腸炎に対する治療剤として、製造販売承認を取得したことをお知らせします。

当社は、国内の中等症から重症の活動期の潰瘍性大腸炎患者を対象としたCCT-101試験および中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者895名を対象に、導入療法及び維持療法におけるベドリズマブの有効性、安全性を評価した海外臨床第3相試験であるGEMINI I試験の結果を基に、2017年8月に厚生労働省に製造販売承認申請を行いました。

北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター長 日比紀文医師は、「近年、日本国内における潰瘍性大腸炎患者数は増加傾向にあります。治療選択肢の増加とともに診療の質も向上したものの、未だ日々の生活に困難を抱えている患者さんが数多くいらっしゃいます。エンタイビオは、腸管選択的に免疫反応を調節する新しい作用機序を有する生物学的製剤です。本剤が治療選択肢に加わることは、潰瘍性大腸炎の診療がまた一歩前進したことを意味していると考えています」と述べています。

また当社の日本開発センター所長である廣田直美は、「世界60ヵ国以上で承認され、潰瘍性大腸炎の臨床的寛解の維持に寄与している本剤を、国内の潰瘍性大腸炎の患者さんに新たな治療選択肢として提供できることを嬉しく思います。このたびの製造販売承認取得は、当社にとって極めて重要なマイルストンです。当社は、患者さんにより良い日常生活を送っていただくこと、また医療関係者の方々に必要とされる医薬品をお届けすることに引き続き努めてまいります」とコメントしています。

本剤は標準療法または抗TNFα抗体による治療に対し、効果不十分、効果減弱、もしくは不耐性である中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎およびクローン病に対する治療薬として、2014年5月に欧州及び米国にて承認を取得しました。本剤は、本年5月時点で20万人年以上の患者さんに使用されています。

なお、欧米他では「Entyvio(エンティビオ)」等の製品名で承認されており、日本における製品名は「エンタイビオ」(英語表記はEntyvio)です

<潰瘍性大腸炎について>
現在、日本における潰瘍性大腸炎の患者数は約22万人[i]以上と推定されています。潰瘍性大腸炎は最も代表的な炎症性腸疾患の一つで、再燃と寛解を繰り返す慢性の炎症が大腸粘膜に生じる進行性の疾患です。よく見られる症状は、腹痛、腹部不快感、下痢時の出血あるいは排膿です。潰瘍性大腸炎の病因については明らかになっていませんが、最近の研究では、遺伝素因や環境要因に加え、腸内細菌抗原に対する異常な免疫応答といった様々な因子が関与する、多因子疾患と考えられています。

<エンタイビオについて>
エンタイビオは、中等症から重症の潰瘍性大腸炎またはクローン病に対する治療薬として、現在60カ国以上の国で承認を取得しています。潰瘍性大腸炎は、炎症性細胞の大腸粘膜への浸潤が増加し、これらの炎症性細胞の存在によって潰瘍性大腸炎に特徴的な炎症性反応が引き起こされます。本薬は、炎症を起こしている腸管組織に炎症性細胞の一種であるTリンパ球の遊走を阻害することで、炎症を軽減するようデザインされています。細胞接着分子であるMAdCAM-1は腸管の血管内皮に選択的に発現しており、一方α4β7インテグリンは循環血液中のある種の白血球サブセットに発現しています。本薬は、α4β7インテグリンに特異的に結合し、α4β7インテグリンとMAdCAM-1との相互作用を阻害することにより、炎症を起こした腸管組織へのTリンパ球の遊走を抑制し、炎症を軽減します。

<CCT-101試験について>
CCT-101試験は、日本人の中等症又は重症の活動期潰瘍性大腸炎患者292名を対象としています。導入期コホート1(246名)では、二重盲検法により0週目、2週目、6週目にベドリズマブ300mgを投与する群とプラセボを投与する群のいずれかに無作為に割り付けました。導入期コホート2(46名)では、非盲検下で0週目、2週目、6週目にベドリズマブ300mgを投与しました。10週目に行った有効性の評価時、ベドリズマブ投与により改善がみられた患者を14週目に維持期に組み入れ、54週目まで8週間毎にベドリズマブ300mgを投与する群とプラセボを投与する群のいずれかに無作為に割り付けました。導入期の主要評価項目である10週目改善率を比較したところ、プラセボ群(32.9%)よりベドリズマブ群(39.6%)の方が上回っていたものの統計学的に有意な差はみられませんでした[P=0.2722;調整オッズ比(AOR)=1.37;95% CI, 0.779-2.399]。維持期の主要評価項目である60週目寛解率は、ベドリズマブ群およびプラセボ群でそれぞれ、56.1% (23/41)、31.0% (13/42) となり、統計学的な有意差がみられました(P=0.0210; AOR=2.88; 95% CI, 1.168-7.108)。さらに、発現した有害事象は概ね軽度から中等度であり、安全性に関して治療群間で臨床的に明らかな違いはみられませんでした。

<GEMINI試験について>
ベドリズマブの安全性及び有効性はGEMINI試験の結果によって評価されています。GEMINIⅠ試験、GEMINIⅡ試験、GEMINIⅢ試験、GEMINI LTS(非盲検、長期安全性)試験、以上4つの臨床第3相試験で構成されており、約40カ国において、潰瘍性大腸炎又はクローン病を有する2,400名の患者が登録されました。

  • GEMINIⅠ試験:中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎患者を対象に、導入療法及び維持療法におけるベドリズマブの投与について評価したプラセボ対照比較試験
  • GEMINIⅡ試験:中等症から重症の活動期クローン病患者を対象に、導入療法及び維持療法におけるベドリズマブの投与について評価したプラセボ対照比較試験
  • GEMINIⅢ試験:中等症から重症の活動期クローン病患者を対象に、導入療法におけるベドリズマブの投与について評価したプラセボ対照比較試験
  • GEMINI LTS試験:潰瘍性大腸炎又はクローン病のいずれかを有する患者を対象に、ベドリズマブの長期安全性について評価した非盲検試験

<消化器系疾患領域に対する当社の取り組み>
世界中で7,000万人を超える人々が消化器系疾患に罹患しており、それらの疾患は患者さんの日常生活を困難にさせる場合があります。当社は、革新的な医薬品、患者さんの疾患管理に対する献身的なサポート、また医療を取り巻く環境への貢献を通して、消化器系疾患を有する患者さんのQOL向上を目指し邁進してまいります。また、当社は、炎症性腸疾患や酸関連疾患、消化管運動障害などのアンメットメディカルニーズの高い疾患に対して革新的な医薬品を提供することで消化器系疾患領域をリードしていきます。当社の研究開発チームは、腸内細菌を対象とした治療法を更に科学的に発展させることに加えて、セリアック病や肝疾患に対する治療薬開発の探求を進めてまいります。25年以上にわたり消化器系疾患領域に携わってきた経験、治療の幅広いアプローチ、世界的な提携ネットワークを活かし、当社は患者さんによる疾患管理のサポートに貢献してまいります。

<エンタイビオの概要>

製品名

エンタイビオ点滴静注用300mg

一般名

ベドリズマブ(遺伝子組換え)

効能・効果

中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)

用法・用量

通常、成人にはベドリズマブ(遺伝子組換え)として1 回300 mg を点滴静注する。初回投与後、2 週、6 週に投与し、以降8 週間隔で点滴静注する。


<注意事項>
本リリースに記載されている医薬品の情報は、当社の経営情報の開示を目的とするものであり、開発中のものを含むいかなる医薬品の宣伝、広告を目的とするものではありません。

 

以上



[i]西脇祐司ら; 潰瘍性大腸炎およびクローン病の有病者に関する全国疫学調査 調査結果報告, 厚生労働科学研究費補助金 分担研究報告書,62-76: 2017