クローン病に伴う肛囲複雑瘻孔治療薬Cx601の長期寛解維持療法の新たな成績の発表について

クローン病に伴う肛囲複雑瘻孔治療薬Cx601の長期寛解維持療法の新たな成績の発表について


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2017年2月20日

-第12回Congress of the European Crohn’s and Colitis Organisation(ECCO)において第3相ADMIRE-CD試験における52週時点の結果を発表

武田薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、以下「武田薬品」)とTiGenix NV(本社:ベルギー ルーヴェン、以下「TiGenix社」)は、このたび、クローン病に伴う難治性肛囲複雑瘻孔患者を対象とした長期寛解維持療法を評価する臨床第3相試験であるADMIRE-CD試験における52週時点の新たな成績を発表しました。Cx601は、クローン病に伴う肛囲複雑瘻孔の治療薬であり、同種異系の脂肪由来幹細胞の懸濁剤です。今回の試験結果は第12回Congress of the European Crohn’s and Colitis Organisation(ECCO)において発表されました。

 

ADMIRE-CD試験は、クローン病に伴う肛囲複雑瘻孔に対するCx601の有効性と安全性を検討するためにデザインされた、無作為化、二重盲検、プラセボ対照の臨床第3相試験です。本試験に組み入れられた患者さんは、クローン病の通常治療に加えてCx601を単回投与した群、または、プラセボを投与したコントロール群へ無作為に割り付けられました。Cx601投与群では、コントロール群と比較して、modified-ITT解析対象集団において臨床評価および放射線医学的評価の複合寛解[1]を達成した割合(56.3%および38.6%、p=0.010)、ならびに52週時点の臨床的寛解を達成した割合(59.2%および41.6%、p=0.013)が有意に優れていることが示されました。modified-ITT解析対象集団において、24週時点で複合寛解を示した患者さんのうち52週時点までに再発を示さなかった患者さんは、Cx601投与群の方がコントロール群よりも多かったことこと(75.0%および55.9%)も報告されました。因果関係ありと判断された有害事象(非重篤および重篤)、ならびに有害事象によって試験中止となった患者さんの割合は、いずれの群においても同程度(20.4%および26.5%)でした。

クローン病は、消化管における慢性的な炎症疾患であり、ヨーロッパにおいては160万人の患者さんがいると考えられています。肛囲複雑瘻孔はクローン病患者さんにおいてみられる合併症であり、治療の選択肢が限られています。肛囲複雑瘻孔は、予後不良かつ治療オプションが少ない希少疾患であることが知られており、2009年、Cx601は肛囲瘻孔の治療薬として欧州委員会よりオーファン指定を受けました。2016年3月、TiGenix社は欧州医薬品庁(EMA)にCx601の販売許可申請を行っており、2017年内にEMAの結論が出るものと見込んでいます。また2016年9月、武田薬品はスイス連邦医薬品庁(Swissmedic)よりクローン病に伴う希少疾患である肛囲複雑瘻孔に対する治療薬としてCx601のオーファン認定を受けました。

当社Gastroenterology Therapeutic Area UnitHeadであるAsit Parikhは、「現在、クローン病に伴う肛囲瘻孔は既存の治療は難しく、しばしば痛み、腫脹、感染および失禁がみられる疾患です。既存の治療法は限られており、合併症および治療失敗率も高くなっています。Cx601は肛囲瘻孔で悩む患者さんへ新たな治療オプションを提供できるものと期待しています」と述べています。

TiGenix社のChief Medical OfficerであるMarie Paule Richardは、「今回の結果は、1年間のフォローアップ期間においてCx601単回投与時の有効性および安全性が維持されたという素晴らしい結果です。ADMIRE-CD試験の評価指標である臨床評価およびMRIを用いた放射線医学的評価のいずれも含めた複合寛解の定義は、過去に実施されたクローン病に伴う肛囲瘻孔の大規模、無作為化臨床試験において一般的に用いられた臨床評価のみに基づくクライテリアよりも厳格であることも重要な点と考えています」と述べています。

 

米国におけるCx601を用いた肛囲複雑瘻孔に関する主要な国際共同臨床第3相試験は、TiGenix社によって2017年内に開始される見込みです。TiGenix社は、米国医薬品食品局(FDA)にファスト・トラックの指定を申請する予定であり、ファスト・トラックの指定が得られれば、米国における開発および審査プロセスが迅速に実施されます。

 

<武田薬品の消化器系疾患領域への取り組みについて>

武田薬品は消化器系疾患領域におけるグローバルリーダーです。25年以上にわたる専門性を有し、当社の革新性への貢献は、今も進化を続けており、影響を与え続けています。ENTYVIO®(一般名:ベドリズマブ)は、武田薬品のグローバル製品であり、消化器および生物製剤の領域におけるスペシャリティケアマーケットを拡大させました。消化管を標的として開発されたENTYVIO®は、2014年に中等度から重度の潰瘍性大腸炎およびクローン病を有する成人患者さんの治療薬として発売されました。タケキャブ®(一般名:ボノプラザンフマル酸塩)は日本で2015年に発売されたカリウムイオン競合型アシッドブロッカーです。武田薬品は、2006年より慢性突発性便秘症治療薬であるAMITIZA®(一般名:ルビプロストン)も発売しています。なお、AMITIZA®は便秘を伴う過敏性腸症候群およびオピオイド誘発性便秘症の治療薬としても承認されています。これらの注目すべき治療薬の発売に先行して、武田薬品は1990年代初めからプロトンポンプ阻害剤であるランソプラゾールによって消化器系疾患領域の道を拓いてきました。武田薬品は、専門的かつ戦略的な社内開発、外部パートナーシップ、ライセンス購入や買収を通じて、近年消化器領域においていくつもの早期臨床ステージの開発品目を保有しており、消化管および肝疾患に罹患された患者さんへ革新的な治療オプションを提供することを約束しています。

 

TiGenix社について>

TiGenix NV(ブリュッセル ユーロネクストおよびNasdaq上場:TIG)は、同種異系またはドナー由来の幹細胞の基盤技術を用いた新薬の開発・製品化に注力する先進的なバイオ医薬品企業です。TiGenix社の脂肪由来幹細胞基盤技術を用いた主要な薬剤候補はCx601であり、クローン病に伴う肛囲複雑瘻孔の治療薬として欧州医薬品庁による審査が実施中です。また、脂肪由来幹細胞を用いた薬剤候補の一つであるCx611は、敗血症を対象とした臨床第1相試験および関節リウマチを対象とした臨床第1/2相試験が完了しています。2015年7月31日、TiGenix社は主要な細胞製品候補であるAlloCSC-01を有するCoretherapix社を買収し、現在、急性心筋梗塞を対象にAlloCSC-01の臨床第2相試験を実施中です。さらに、Coretherapix社から獲得した、心臓幹細胞をベースとした技術を用いた2つ目の新薬候補物質であるAlloCSC-02については、慢性疾患の適応で開発中です。2016年7月4日、TiGenix社は、消化器系疾患領域の大手製薬会社である武田薬品と米国外におけるCx601の独占的開発・販売権に関するライセンス契約を締結しました。TiGenix社は、ベルギーのルーヴェンに本社を置き、スペインのマドリードを中心に事業を展開しています。

 

Cx601について>

Cx601は、局所に注射する同種異系の脂肪由来幹細胞の懸濁剤です。本薬は、抗生物質、免疫抑制剤、または抗TNFα製剤を含む標準治療を少なくとも1回以上実施したにも関わらず効果不十分なクローン病に伴う肛囲複雑瘻孔の治療薬です。クローン病は慢性かつ炎症性の腸疾患であり、現在有効な治療が存在しない肛囲複雑瘻孔を併発する可能性を有しています。肛囲複雑瘻孔は、予後不良かつ治療オプションが十分ではない疾患として知られており、2009年、肛囲瘻孔治療薬としてCx601が欧州委員会よりオーファン指定を受けました。Cx601は、EMAの要望に沿ってデザインされ、欧州とイスラエルで実施された、無作為化、二重盲検、プラセボ対照の臨床第3相試験において主要評価項目を達成しました。「マドリード・ネットワーク」は、本試験への資金援助として低金利の融資を実施しました。なお、本試験はINNTEGRAプランの枠組みでSecretary of State for Research, Development and Innovation(Ministry of Economy and Competitiveness)による資金援助の対象となっています。

本試験において患者さんは、クローン病の通常治療に加えてCx601の単回投与群または、コントロールとなるプラセボ群へ無作為に割り付けられました。主要評価項目は、ベースライン時において柔らかな指圧にも関わらず排膿中の状態から24週時において二次口が完全閉鎖したと臨床評価された状態およびMRIで2 cm超の膿瘍が確認されない状態と定義とされた複合寛解でした。ITT解析集団(n=212)において、Cx601群は、主要評価項目において24週時点の複合寛解が50%であり、コントロール群の34%と比較して統計学的に有意(p=0.024)な結果を示しました。有効性はすべての解析対象集団で堅牢な結果であり、一貫性のある結果が得られました。いずれかの薬剤が投与された状態で発現した(非重篤および重篤な)有害事象、並びに有害事象による投与中止例の割合は、Cx601群とコントロール群で同様でした。本試験の24週時までの結果は、世界で最も高く評価されており、よく知られている医学雑誌の一つであるThe Lancet誌に掲載されました。臨床第3相試験については、持続的な有効性および安全性プロファイルを評価する治療52週時点までのフォローアップ解析も終了しています。フォローアップ解析では、ITT解析対象集団において、Cx601群は52週時点の複合寛解は54%であり、コントロール群の37%と比較して統計学的に有意(p=0.012)な結果を示しました。また、24週時点で複合寛解を示したCx601群の患者さんは52週時点までに再発を示さない割合が高い(75.0%および55.9%)ことも報告されました。臨床第3相試験結果での24週時までの良好なに基づき、TiGenix社は、2016年初頭にEMAに販売許可申請を行いました。TiGenix社は、2015年に試験プロトコールに関する手続きである臨床試験計画評価(Special Protocol Assessment)を通じてFDAと合意に達し、米国でのCx601の開発に向けて準備を進めています。2016年7月4日、TiGenix社は、消化器系疾患領域の大手製薬会社である武田薬品と米国外におけるCx601の独占的開発・販売権に関するライセンス契約を締結しました。

以上