米国臨床精神薬理学会(ASCP)年次総会における大うつ病治療薬Brintellix®(一般名:vortioxetine)の臨床試験結果の発表について

米国臨床精神薬理学会(ASCP)年次総会における大うつ病治療薬Brintellix®(一般名:vortioxetine)の臨床試験結果の発表について


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2014年6月18日

武田薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、以下「武田薬品」)とH. Lundbeck A/S(本社:デンマーク、コペンハーゲン、以下「Lundbeck社」)は、このたび、米国フロリダ州で開催されている米国臨床精神薬理学会(ASCP)年次総会において、大うつ病に対する十分な治療を受けている際、治療に起因する性機能障害(TESD)が発現した大うつ病患者を対象とした、Brintellix®(一般名:ボルチオキセチン臭化水素酸塩)とエスシタロプラムとの直接比較による最新の試験結果を、米国東部夏時間の6月17日にポスターとして発表しましたのでお知らせします。

本試験は、直近で大うつ病の症状を発現し、選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI)の単剤療法が有効であったものの、TESDを発現した447名の患者さんを対象に、既存治療を中止し、Brintellix 10 mg/日投与群、あるいはエスシタロプラム10 mg/日(治療1週目は10 mg、治療2週目は20 mg)投与群にそれぞれ無作為に割り付け、8週間投与しました。なお、Brintellixならびにエスシタロプラムの用量は、投与開始から2週目、4週目、または6週目に主治医の判断により適宜調節可能でした。本試験の主要評価項目は、混合効果モデル反復測定法 (MMRM)を用いて評価したChanges in Sexual Functioning Questionnaire Short-Form(CSFQ-14)総合スコアにおける、投与8週時点のベースラインからの変化量でした。CSFQ-14は、性機能に関する5段階評価ツールであり、性的反応周期を3つのフェーズに定義し、各フェーズにおける性機能のスコアを算出する臨床用ならびに調査用の指標です。

本試験の結果において、Brintellix投与群(n=169)では、エスシタロプラム投与群(n=179)に比べ、投与8週時点のCSFQ-14総合スコアが統計学的に有意に改善し(P=0.013、MMRM)、投与群間差の平均値が2.2ポイント(95%信頼区間:0.48~4.02)であったことが示されました。また、Brintellix投与群では、エスシタロプラム投与群に比べ、より多くの患者さんのスコアの改善(CSFQ-14総合スコアの投与開始前からの変化量が3以上、オッズ比=1.51、P=0.06)を認めました。なお、投与8週時点では、両投与群において、モンゴメリー・アズバーグうつ病評価スケール(Montgomery-Åsberg Depression Rating Scale [MADRS])合計スコアにほぼ同等の反応が認められました。また、今回の試験において、Brintellix投与群において多く発現した有害事象は、吐き気、頭痛、めまいでした。

University of Virginia School of Medicineの教授で、本試験の治験責任医師であるAnita H. Clayton医師は、「今回の試験において、大うつ病に対する十分な治療を受けている際、TESDを発現された患者さんでは、エスシタロプラム投与群と比べて、Brintellix投与群において性機能の有意な改善が認められました。TESDに着目した臨床試験が実施されこの副作用に関するより多くの情報が明らかになることは有意義であると考えています」と述べています。

今回得られた試験結果は、Brintellixに関する国際臨床試験プログラムに基づくものです。Brintellixの安全性及び有効性は、6本の6~8週間の短期投与試験及び1本の24~64週間の長期維持試験による合計7本の包括的な臨床試験プログラムにおいて評価されており、これらの試験結果から、本剤の、成人の大うつ病の全般的な症状に関する統計学的に有意な改善効果が認められています。

Brintellixは、成人の大うつ病の治療薬として、2013年9月30日に米国食品医薬品局より承認されています。

Keller, A, McGarvey, E. L., & Clayton, A. H. (2006). Reliability and construct validity of the Changes in Sexual Functioning Questionaire Short-Form (CSFQ-14). Journal of Sex and Marital Therapy, 32, 43-52.

以上

【Late Breakerとして発表されたBrintellixの臨床試験データ】

目的

大うつ病性障害に対する十分な治療を受けている際、治療に起因する性機能障害(TESD)が発現した大うつ病患者を対象として、Brintellix投与群とエスシタロプラム投与群の性機能に対する影響を直接比較検討する

試験デザイン

無作為化、二重盲検、実薬参照、可変用量、並行群間比較

対照薬

エスシタロプラム

対象患者

直近で大うつ病性障害のエピソードを発現し、選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI)の単剤療法に反応を示したものの、TESDを発現した大うつ病性障害患者

患者数

Brintellix投与群の患者(n=169)、エスシタロプラム投与群の患者(n=179)

主要評価項目

混合効果モデル反復測定法 (MMRM)を用いて評価したChanges in Sexual Functioning Questionnaire Short-Form(CSFQ-14)総合スコアにおける投与8週時点のベースラインからの変化量

主要評価項目の結果

Brintellix投与群の患者(n=169)では、エスシタロプラム投与群の患者(n=179)に比べ、投与8週時点のCSFQ-14総合スコアが統計学的に有意に改善し(P=0.013、MMRM)、投与群間差の平均値が2.2ポイント(95%信頼区間:0.48~4.02)であったことが示された

主な有害事象

吐き気、頭痛、めまい

 

Brintellix(ボルチオキセチン臭化水素酸塩)について>

Brintellixは、神経伝達物質セロトニン(5-HT)の再取り込み阻害作用、また、5-HT1A受容体刺激作用、5-HT1B受容体の部分的刺激作用、5-HT3、5-HT1D、5HT7受容体拮抗作用など、複数のセロトニン受容体での作用を有すると考えられています。Brintellixは、これらの薬力学的作用を併せ持つ初めてかつ唯一の薬剤です。

BrintellixはLundbeck社が創製し、米国における臨床試験はLundbeck社と武田薬品が共同で行い、米国市場における新薬承認申請(NDA)は武田薬品が行いました。BrintellixはLundbeck 社の登録商標であり、武田薬品が使用許諾を得て使用しています。

世界保健機関(WHO)は、Anatomical Therapeutic Chemical(ATC:解剖治療化学分類)において、Brintellixを「その他」の抗うつ薬というクラスに分類しました。

6~8週間のプラセボを対照とした試験において、Brintellix投与時に最も多く発現した有害事象(発現率≧5%かつプラセボ投与群の少なくとも2倍の発現率)は吐き気、便秘、嘔吐でした。短期投与試験全体において、Brintellix 5~20mg/日を投与した患者さんの5~8%が、プラセボ投与群においては4%が副作用により治療を中止しており、最も多い副作用は吐き気でした。

6~8週のプラセボを対照とする臨床試験において、Brintellix投与群では投与開始前からの平均体重変化量に有意な影響は認められませんでした。また、12週間のBrintellix投与にて効果の認められた患者さんを対象とした、24週間のプラセボ対照・二重盲検・長期維持試験において、プラセボ投与群とBrintellix投与群の体重変化量に差はありませんでした。なお、プラセボ対照試験において、Brintellix投与群の患者さんの収縮期血圧及び拡張期血圧ならびに心拍数等のバイタルサインについても、影響は認められませんでした。

 

<承認用量>

Brintellix 5mg錠、10mg錠、20mg錠(食事の摂取に関わらず服用可能)

Brintellixの承認用法・用量は5~20 mg 1日1回、推奨服薬開始用量は1日10 mgであり、米国における臨床試験の結果から、高用量投与時により高い治療効果が示されたことから、患者さんの忍容性に応じて1日20mgまで増量することが可能です。高用量投与に忍容性のない患者さんは、5mg/日まで減量することが推奨されます。幅広い用量設定により、多様な患者さんのニーズに対応可能です。