武田薬品工業株式会社
子育てもひと段落し、仕事も充実していた5年ほど前、乳がんが発覚した。「突然のことで大変驚きました。そして仕事をどうしようかと、正直、不安になりました」と当時を振り返る。少し悩んだあと、上司に相談したところ、「病気だからといって仕事を辞める必要はない。みんな働きながら治している。100%とはいかないまでも、勤務を続けながら闘病したっていいじゃないか」と言ってくれたという。乳がんの手術を受け、抗がん剤治療や放射線治療など長い闘病生活を経験した。当然ながら、仕事にも影響が出た。「手術そのものは2週間くらい入院するだけでしたが、抗がん剤治療が始まってからは、投与後に4日程度休んで2週間出勤するサイクルを8回も繰り返しました。放射線治療は1日15分ほどですが、ひと月近く毎日通院する必要があるため、会社と病院を往復する日々を送りました。おかげさまで今ではすっかり回復し、ずっと体調も良好です」。
闘病中に一番厳しさを感じたことは何か?という問いに、渡邊はこう答えた。「実際に患者の立場になって感じたのは、仕事を持っていて良かったという実感です。自分が『患者さん』という立場だけになると、心細くなるものです。病気とは関係ない『働く自分』という別の役割があることで、かなり救われました。フルにサポートしてくれた職場の仲間には、本当に感謝しています」。