- 世界的に権威ある生物医学ジャーナル誌「Nature Medicine」に、PARADIGM試験に参加された患者さんの腫瘍の遺伝子異常と治療効果の関連についての研究結果が掲載
- 患者さんの血液を用いた血中循環腫瘍DNAの解析は、原発巣占拠部位による治療選択と比較して、パニツムマブの治療による利益が得られる可能性がより高い患者さんの特定に繋がる可能性
当社は、このたび、パニツムマブ(一般名、製品名「ベクティビックス®」)の切除不能進行再発大腸がんの初回薬物療法に関する国内臨床第3相試験である「PARADIGM試験」(Panitumumab and RAS, Diagnostically useful Gene Mutation for mCRC )に付随するバイオマーカー研究(以下「本研究」)に関する論文が、2月12日(米国時間)に生物医学ジャーナル誌「Nature Medicine」に掲載されたことをお知らせします。本論文では、PARADIGM試験に参加された患者さんから、治療開始前に採取した血液を用いて血中循環腫瘍DNA (ctDNA)を解析し、治療効果との関連を検討した本研究の成果がまとめられています。
本研究の結果、抗EGFR抗体薬の治療耐性との関連が報告されている10個の遺伝子異常(KRAS、NRAS、BRAF(V600E)、PTEN及びEGFR細胞外ドメインの変異、HER2及びMET増幅並びにALK、RET及びNTRK1融合)を認めない集団において、mFOLFOX6+ベバシズマブ併用療法群と比較してmFOLFOX6 +パニツムマブ併用療法群で、原発巣の占拠部位に関わらず全生存期間の延長を認めました(パニツムマブ併用療法群:40.7か月、ベバシズマブ併用療法群:34.4か月、HR:0.76(95% CI: 0.62-0.92))。なお、本研究におけるパニツムマブ投与時の安全性プロファイルはこれまでに公表された臨床試験結果と同様の内容でした。
PARADIGM試験における主解析では、RAS遺伝子野生型で原発巣占拠部位が左側の集団において、ベバシズマブ併用療法群に対するパニツムマブ併用療法群の統計学的に有意な全生存期間の延長が認められており、原発巣占拠部位による治療選択が現在の標準治療として国内外の大腸癌治療ガイドラインで推奨されています。本研究の結果は、原発巣占拠部位による治療選択と比較して、患者さんの血液を用いた血中循環腫瘍DNAの解析は、パニツムマブの治療による利益が得られる可能性がより高い患者さんの特定に繋がる可能性を示唆しました。
本論文の筆頭著者である国立研究開発法人国立がん研究センター東病院の設楽 紘平 消化管内科長は、「PARADIGM試験に付随する本研究の結果は、大腸がんの個別化治療の進展に貢献できる大変意義のあるものであり、このたび、世界でもきわめて重要な最先端研究に特化した雑誌であるNature medicine に掲載されたことを嬉しく思います。本研究成果が、臨床に応用され、ひとりでも多くの患者さんのより良い治療結果に結び付くことを心から願っています」と述べています。
当社の日本オンコロジー事業部長の内田智は、「今後もさらに、パニツムマブをはじめとする抗EGFR抗体薬が大腸がんの治療において重要な選択肢の一つとして役立つことを願っています。引き続き、当社は大腸がん患者の皆さまに貢献できるよう努めてまいります」と、述べています。
RAS遺伝子野生型で化学療法未治療の切除不能な進行再発大腸がん患者さんに対して適切な治療を検証するため、mFOLFOX6 +抗VEGF抗体薬(ベバシズマブ)併用療法とmFOLFOX6 +抗EGFR抗体薬(パニツムマブ)併用療法の有効性および安全性を比較した前向きランダム化比較試験です。
主要評価項目である全生存期間において、原発巣占居部位が左側及び全体、いずれの集団でもmFOLFOX6 +パニツムマブ併用療法がmFOLFOX6+ベバシズマブ併用療法に対し、統計学的に有意な延長が認められました(左側 全生存期間中央値:37.9か月 vs. 34.3か月, HR=0.82 [95.798% CI: 0.68-0.99], p=0.03、全体 全生存期間中央値:36.2か月 vs. 31.3か月, HR=0.84 [95% CI:0.72-0.98], p=0.03)
ベクティビックス®は、切除不能な進行再発大腸がん(mCRC)の治療薬としてFDAにより承認されました。ベクティビックス®は、フッ化ピリミジン系、オキサリプラチン、及びイリノテカンを含む化学療法による前治療後の疾患進行後のEGFR発現mCRC患者に対する単剤療法として、 2006年9月に米国で、2010年に日本で承認・発売されました。
大腸がんの治療の原則は、手術によって、大腸に存在するがん「原発巣」や転移しているがん「転移巣」を完全に切除することです。しかし、手術でがん病変を切除できなかった場合や、手術後に再発し、その病変を切除できない場合には、"切除不能"大腸がんと分類されます。これは、技術的に切除できるかということではなく、がん組織を完全に取り除き再発を長期間抑えることができるか、ということで判断します。"切除不能"と判断された場合には、がんの進行を抑え、延命とがんに伴う症状のコントロールを目的に全身化学療法を行います。
武田薬品工業株式会社ホームページ参照:
https://www.takeda.co.jp/patients/mcrc/about2/
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