武田薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、以下「武田薬品」)と ルンドベック・ジャパン株式会社(本社:東京都港区、以下「ルンドベック・ジャパン」)は、うつ病や統合失調症など精神疾患を専門にした治験支援機関(SMO)であるCNS薬理研究所主幹であり医療法人石郷岡病院 理事長で精神科医の石郷岡 純先生とともに、うつ症状の認識と治療への期待に関する患者さんと医師の異同を検討する共同調査研究を行いました。その研究結果が去る9月10日にNeuropsychiatric Disease and Treatmentに掲載1されたほか、9月19日から21日に開催された第117回日本精神神経学会学術総会においてもその要旨を発表いたしましたのでお知らせいたします。
うつ病は、一進一退を繰り返しながら時間をかけて回復し、寛解に至っても6割2の患者さんが再発するなど、回復の判断の見極めが非常に難しい疾患です。特に現役世代では、日本企業の9.2%がメンタルヘルスの不調により休職した従業員を抱えるといわれ3、メンタルヘルスの不調を抱える患者さんの社会復帰を適切に支援することは日本社会全体にとって大きな課題となっています。長引く休業期間に焦って復帰過程で出勤して悪化したり、出勤できても仕事が手につかないプレゼンティーズム4の問題もあり、社会復帰のタイミングをどう判断するかは多角的な検討が求められています。
そこで本調査研究では、うつ病の患者さんと医師の「うつ病による現在の症状」、「改善していない症状」、「治療したい症状」、「社会機能評価」、「治療に期待すること」に関する認識の相違を理解する目的で、20歳から65歳の全国の患者さんと医師(解析対象回答828、患者さん828名、医師326名)を対象にインターネット調査を実施しました。
今回の調査結果から、本調査に回答されたうつ病の患者さんと医師において、全体として患者さんと医師の間でうつ病の症状や治療に関しての認識に大きな違いはないことがわかりました。しかし、病期によっては、「現在の症状」 「改善していない症状」「治療したい症状」に関して、患者さんと医師の間で認識の違いがあることがわかりました。また、患者さんと比べて医師では、病期にかかわらず患者さんの職業機能や対人関係といった社会機能を低く評価する傾向がみられました(詳細次ページ以降参照)。
本研究の研究代表者である石郷岡 純先生は今回の調査結果について、「病期によっては、患者さんと医師で症状、社会機能、治療に期待することにおいてやや違いが見られたが、全体として、患者さんと医師の間で大きな違いが見られませんでした。両者に違いが見られた職業評価・対人関係などの社会機能に関しては、患者さんが楽観的にとらえている、あるいは患者さんにとって症状、社会機能の回復の目標がイメージできていない可能性が示唆されました。患者さんに対してうつ病の社会機能についての知識を浸透させるための啓発、および医師においてはスムーズな社会復帰のために患者さんと医師の間で認識に差があることを理解したうえで診療に臨むことが期待されます」と、述べています。
1 Ishigooka J et al., 2021, Neuropsychiatr Dis Treat. ‘Patient and Physician Perspectives of Depressive Symptoms and Expectations for Treatment Outcome: Results from a Web-Based Survey’
2 厚生労働省 こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト https://kokoro.mhlw.go.jp/return/return-worker/
3 厚生労働省 令和2年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r02-46-50b.html
4 経済産業省 平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業 健康経営に貢献するオフィス環境の調査事業 健康経営オフィスレポート https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf
◆調査結果概要
<現在の症状:各病期における現在の症状の患者と医師の認識>
<武田薬品について>
武田薬品工業株式会社(TSE:4502/NYSE:TAK)は、日本に本社を置き、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーです。武田薬品は、「すべての患者さんのために、ともに働く仲間のために、いのちを育む地球のために」という約束を胸に、革新的な医薬品を創出し続ける未来を目指します。研究開発においては、オンコロジー(がん)、希少遺伝子疾患および血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、消化器系疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤とワクチンにも注力しています。武田薬品は、研究開発能力の強化ならびにパートナーシップを推し進め、強固かつ多様なモダリティ(創薬手法)のパイプラインを構築することにより、革新的な医薬品を開発し、人々の人生を豊かにする新たな治療選択肢をお届けします。武田薬品は、約80の国と地域で、医療関係者の皆さんとともに、患者さんの生活の質の向上に貢献できるよう活動しています。詳細についてはhttps://www.takeda.comをご覧ください。
<ルンドベック(H.Lundbeck A/S) について>
ルンドベックは精神・神経疾患に特化したグローバル製薬企業です。 70年以上にわたり精神・神経科学研究の最前線に立ち、日々すべての人が最善の状態になれることを目指して、ルンドベックの存在意義である脳の健康を回復することに注力しています。 世界で推定7億人を超える人々が精神・神経疾患を抱えて暮らしています。そしてあまりにも多くの人々が適切な治療を受けていない、偏見にさらされている、勤務日数が減少する、早期退職をせざるをえないなどの状況に苦しんでいます。 私たちルンドベックは日々、精神・神経疾患を患っている人々の治療の向上と、より良い生活のために努力を惜しみません。その取り組みを「Progress in Mind」(プログレス・イン・マインド)と呼んでいます。 ルンドベックは、現在50ヵ国以上、約5,600人以上の社員を擁し、研究、開発、製造、マーケティング、販売に従事しています。また、製品は100ヵ国以上で販売されており、研究センターはデンマーク及び米国、製造工場はデンマーク、フランス、イタリアにあります。 2020年の収益は約177億デンマーククローネ(24億ユーロ、27億米ドル)でした。 ルンドベックに関する詳しい情報は、www.lundbeck.comをご覧ください。
<ルンドベック・ジャパンについて>
ルンドベック・ジャパンは、2001年に日本法人を設立、2019年にトリンテリックス®のコ・プロモーションのため、コマーシャル本部を構築し営業活動を開始いたしました。精神・神経疾患領域に特化した製薬企業として、グローバルで蓄積した豊富な知識と知見をもとに、日本においても患者さんの治療向上とより良い生活に貢献するために取り組んでいます。ルンドベック・ジャパンに関する詳しい情報は、www.lundbeck.co.jp をご覧ください。
【調査概要】
■ 調査名: |
患者と医師の観点からのうつ症状の認識と治療への期待の異同に関する検討 |
■ 調査時期: |
患者調査:2020年3月20日-4月12日 |
■ 調査地域: |
日本全国 |
■ 調査方法: |
患者:楽天インサイトパネル登録患者へのインターネット調査 |
■ 調査対象: |
患者:(1)うつ病と診断され、通院している (2)現在うつ病治療のために薬を服用している、または過去3か月以内に薬を服用していた (3)20歳以上、65歳以下で、 (4)過去の最もうつ病症状が重い時期についてPHQ-9を実施し、総得点で10点以上の患者を対象 |
■ 解析対象回答数: |
828 (患者さん828名、医師326名) |
■ 解析方法: |
対応する病期の患者さん群と医師群間で一般化推定方程式を用いて解析 |