アクセシビリティ機能を有効化アクセシビリティ機能を有効化

我が国のゲノム医療の大規模な基盤構築へ

2020年4月15日
- 武田薬品とToMMoとの共同研究について

【発表のポイント】

  • 我が国のゲノム医療の基盤となる一般住民の全ゲノムリファレンスパネルの飛躍的な充実を図るとともに、日本人集団に特徴的な遺伝子型の発見を目指す
  • 全ゲノム情報と脳MRI画像を含む健康情報・医療情報の統合的解析を行い、新薬・治療法の研究開発を加速


【概要】
国立大学法人東北大学東北メディカル・メガバンク機構(所在地:仙台市青葉区、以下「ToMMo」)および武田薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、以下「武田薬品」)は、このたび以下の研究について共同研究契約を締結しましたのでお知らせします。

  • 一般住民の全ゲノムリファレンスパネルの充実と日本人集団に特徴的な遺伝子型の発見
  • 全ゲノム情報と脳MRI画像を含む健康情報・医療情報の統合的解析による新薬・治療法の研究開発

本契約に基づき、武田薬品は、本共同研究で取得される約1万人の全ゲノム情報への1年間の優先的アクセス権を獲得し、それに紐づいた各種健康情報・医療情報とともに統合的な解析を行います。さらに、本共同研究およびその後の取組を通じて、我が国のゲノム情報の医療分野での活用を推進するため、ToMMoと武田薬品は約10万人規模の全ゲノム解析とこの解析結果の利活用を目的としたコンソーシアムの実現を目指します。

ToMMoの機構長である山本雅之は、「ToMMoは一般住民(健常人)全ゲノムリファレンスパネルの一層の充実とその利活用を推進するために、コホート調査※1に参加された15万人の一般住民の全ゲノム解析の早期実現を目指しています。今回の共同研究が契機となり、多くの賛同企業の参画のもと10万人規模の全ゲノム解析とその利活用を目指すコンソーシアムが形成されること、さらに、それを基盤とした新しい薬や治療法の開発が発展することを期待しています」と述べています。

武田薬品ResearchのHeadであるSteve Hitchcockは、「長期的な健康状態の推移を遺伝的背景の多様性に基づき理解することは、患者特性を考慮した集団ごとに、より精度の高い予防法や治療法を開発する上で極めて重要です。ToMMoはまさにこれらの研究開発を進める上での基盤を持つ世界で有数のバイオバンク※2を構築しており、今回の共同研究を通じてその基盤の発展に関与できることを嬉しく思います。今回の全ゲノム解析が契機となり、さらにゲノム医療基盤が整備されていくことを期待します」と述べています。

【研究の詳細】

  • 一般住民の全ゲノムリファレンスパネルの充実と日本人集団に特徴的な遺伝子型の発見

本共同研究では、ToMMoのコホート調査に参加された一般住民約1万人分の全ゲノム解析を行います。解析したゲノム情報は、個人情報の保護に厳しく留意した上で今後のゲノム医療、個別化医療・予防の基盤となる健常人全ゲノムリファレンスパネルの充実に使われます。さらに、解析したゲノム情報は日本人集団に特徴的な遺伝子型を探索することによって、健康に関係する国際的に既知の因子の日本人における影響の大きさの調査や、日本人の薬剤に対する副作用予測などにも活用されます。

  • 全ゲノム情報と脳MRI画像を含む健康情報・医療情報の統合的解析による新薬・治療法の研究開発

本共同研究では、全ゲノム情報とそれに紐づいた脳MRI検査情報を含む各種医療情報を統合的に解析し、疾患関連因子、特に、認知機能低下など精神・神経疾患に対するリスク因子、保護因子などの探索を行い、新薬・治療法の研究開発の加速につなげます。

【参考】
<全ゲノム解析について>
タンパク質をコードする1-2%の領域のみならず、遺伝子の発現量やゲノム構造などを調節すると考えられている非コード領域も解析する全ゲノム解析は、英国など世界中で盛んに行われています。日本最大の住民コホートであるToMMoに保存されている試料の全ゲノムを解析することで、ゲノム医療・精密医療や個人に即した(個別化)予防を加速することができます。

<全ゲノムリファレンスパネルについて>
ToMMoは、これまで数千人規模の全ゲノム解析を行い、日本人全ゲノムリファレンスパネルを構築してきました。これは、一塩基バリアント(Single Nucleotide Variant:SNV)、INDEL(挿入(insertion: IN)・欠失(deletion: DEL))の頻度情報、アレル頻度情報などをまとめたデータベースです。このデータベースは、患者ゲノムのクリニカルシークエンスの対照となる一般住民(健常人)パネルとして、責任変異の同定精度を向上させるとともに、日本人の遺伝型予測精度を向上させ、疾患リスク因子のより詳しい調査を可能にすることにも貢献しています。

<ToMMoについて>
ToMMoは、東日本大震災の被災地における医療の再生と医療機関の復興を目指し、被災地を中心とした15万人規模の地域住民の健康調査などを行う東北メディカル・メガバンク計画を実施するために、2011年度に設置されました。その中で世界初の出生からの三世代コホート調査※3も実施しています。併せて生体試料、健康情報などのバイオバンクを構築し、ゲノム・健康・診療情報などを解析することで、創薬研究や個別化医療などの次世代医療体制の構築を目指しています。詳細については、https://www.megabank.tohoku.ac.jp/をご覧ください。

<武田薬品について>
武田薬品工業株式会社(TSE:4502/NYSE:TAK)は、日本に本社を置き、自らの経営の基本精神に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーです。武田薬品のミッションは、優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献することです。研究開発においては、オンコロジー(がん)、希少疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)および消化器系疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤およびワクチンにも注力しています。武田薬品は、研究開発能力の強化ならびにパートナーシップを推し進め、強固かつ多様なモダリティ(創薬手法)のパイプラインを構築することにより、革新的な医薬品を開発し、人々の人生を豊かにする新たな治療選択肢をお届けします。武田薬品は、約80カ国で、医療関係者の皆さんとともに、患者さんの生活の質の向上に貢献できるよう活動しています。詳細については、https://www.takeda.com/jp/をご覧ください。

【用語解説】
※1 コホート調査
ある特定の人々の集団を一定期間にわたって追跡し、生活習慣などの環境要因・遺伝的要因などと疾病発症の関係を解明するための調査のこと。

※2 バイオバンク
生体試料を収集・保管し、研究利用のために提供を行う。東北メディカル・メガバンク計画のバイオバンクは、コホート調査の参加者から血液・尿などの生体試料を集める。

※3 三世代コホート調査
ToMMo が 2013 年 7 月より開始した、妊婦さんと生まれたお子さんを中心にしたコホート調査。2017 年 3 月までに 7 万人以上の参加者を得ている。世界的に見ても貴重な大規模家系付きコホート調査。